35.いか、ないで

「ん……」

ゆっくりと意識が浮上していく。
なんだろう、瞼の周りが重い。
夢から覚めたみたいに頭がぼんやりする。

「ここは……」

きょろきょろと辺りを伺いながら体を起こす。あたたかい布団が体からずり落ちて、いつの間に布団の中に入ったんだっけ、と考えて。視界に入った部屋に懐かしさを感じて、首を傾げる。
わたしの、好きだったものが置いてある部屋。そんなに豪華なわけでもとても綺麗にしてあるわけでもないけれど、居心地の良さを覚える部屋。
懐かしくなって見る夢の中で、何度となく見た景色。
つまり……地球での、わたしの部屋。

「……え、夢オチ?」

え? だって、え?
バッと体を確認するが、昔着ていた懐かしいパジャマの下に傷などは存在していない。半年経って少し伸びていた髪の長さだって、あの頃から全く変わっていない。
どこにも。どこにも、わたしがエフィネアで過ごしていたことを証明してくれるものが、存在しない。

……なら、本当に夢だったのだろうか。
事故のこともラムダのことも、みんなみんな夢で……わたしはずっと、寝ていただけなのだろうか。
突然すぎる。何もかもが突然すぎる。これが物語なら「ちょっと急展開過ぎるし追いつけない、もう少し丁寧に物語を展開させることはできないのか」と酷評されそうな唐突さだ。
どう反応すればいいのかわからなくて、ひきつるような笑みを浮かべるのがわかった。無事でいて良かったという思いと、わたしが手に入れた思い出が夢だったという寂しさとがぐるぐるする。

本当に、良かったの?