47.異界の、昔話

『第二次隊の調査員が全員死亡しました。彼らが持ち帰ったサンプルを無駄にするわけにはいきません』
『ああ、そうだな……研究は続行させる』

ノイズ混じりの視界と音の中で、数人の人間が集まっている。
研究員風の彼らは自分達ヒューマノイドを生み出した者達だ。
我々の稼働理由は、彼らの生活のサポート、護衛、戦闘、他様々。命じられればその通りに動く。今命じられていることは、彼らと共に、調査と研究を進めること。
……以前は、命じられたことを遂行すれば、笑いかけてくる研究員も多かったのに。ここ最近彼らの笑顔を見なくなった。
それは、一体いつからだったか。
一体、いい、いったたたたいブツン。

記録損傷、切り替わります。

『核の変質は、抗体構築のメカニズムに酷似しています』
『フォドラが病原菌を排除しようというのか』
『その病原菌というのは、この場合……』
『間違いないだろうな。リトルクイーンの攻撃対象は我々、人類だけだ……』
『我々は、フォドラから見放されたというんですか!』
『どうしてこんな事に……』

はあ、と深いため息と共に、重苦しい空気が場を支配する。
リトルクイーンが人間を襲っている。
我々に命じられたことは、リトルクイーンを止めるための方法を探すこと。リトルクイーンが彼ら人間を襲う理由を明確にすること。星の核で見つけたもう一つを、もう一つ? もう一つとは、なんだっただろう。

記録損傷、記録に混乱が見られる、メンテナンスを希望。

しかし研究員はヒューマノイドを見ない。
片眼鏡の研究員が、真剣な表情で他の研究員を見た。

『リトルクイーンがここへやってくるのも時間の問題だ。君達は、退避したまえ』
『いえ、我々は最後まで所長と共に残ります』

ぐらり、視界が揺れる。
違う、地震が起きている模様。
震度は4、震源地は……

『くっ長くはないようだな』
『所長、もはやフォドラの核を強制停止する以外手段は……』
『だがそんなことをすれば、フォドラは滅びるのだぞ』
『このままでは、我々人類が先に滅びることになります!』
『しかし……』
『所長! 我々にはエフィネアという希望もあります!』

エフィネア。
フォドラの植民惑星。美しい星。すでに多くの人間が移住している。
フォドラが滅びてもエフィネアがある。決して滅びはしない。
人間が滅びなければ、時間が経てば、落ち着けば。きっと大丈夫。
また、我々は愛おしい故郷であるフォドラへと戻れる。
その発言を受け入れたのか、所長と呼ばれた研究員はやがて鈍く頷いた。

『……わかった。核を停止させよう』
『汝らの選択。しかと聞き届けました』
『リトルクイーン!』

何もなかった場所が光って、そこから少女が滲み出るように現れた。
誰だ。嗚呼、リトルクイーンか。

緊急、緊急……

ガタンと体が大きく揺れた。
やってきた衝撃に素直に倒れれば、研究員達が悲鳴も無く倒れた音が聞こえる。
視界が点滅する。

機体損傷レベルは深刻です。
直ちにメンテナンスを、メンテナンスを、修復、しゅ、しゅふく、く、き、ぼう。

『待て、待ってくれ! 時間をくれ! 我々に生きる機会を!』
『ヒトよ。滅びなさい』

視界が強く光る。
その後に見えたのは、たった一人佇むリトルクイーンの姿だけだ。

『ヒトを滅ぼすこと……それこそが、わたしの存在する理由。』

ブツリ。