50.泣いている、彼女へ

シェリアを外に連れ出して、落ち着かせようと少し離れた場所を目指してゆっくりと歩く。
彼女の手は震えているから。たぶん、僅かに震えるわたしのことには、気付かないでくれていると思う。よかった。慰める側も震えていたら、意味がないからね。

「……ぐすっ、シオリは、本当にいいの?」

鼻声の高い声で言われて、わたしは足を止めた。
未だにぽたぽたと涙を零しているシェリアは、真っ赤になった目でわたしを見ている。

「本当の本当に信じていられるの? 不安にならないの? だって、だってあなた、まだアスベルに何も伝えてないじゃない」

怖くないの、と問うシェリアに、わたしは一瞬言葉につまった。
不安じゃないと言えば嘘になる。でも、ラムダだったらアスベルを守ってくれるだろうし、アスベルがソフィやラントのみんなを残していなくなるなんて思えないから……だから大丈夫だと、楽観的に考えようともしてる。
だから大丈夫。大丈夫だ。
大丈夫だから、とにかく今はシェリアを宥めようと、わたしはなるべく自然に笑った。

「大丈夫だよ。きっとラムダが守ってくれる。アスベルは、アスベルのまま帰って来てくれる」
「どうして……? どうしてみんなそう言い切れるの? 私は……っ私は、こんなに不安でたまらないのに……」
「シェリアみたいに、不安に思ってくれることも大事だよ。わたしは素直に心配出来ないだけで……それにほら、わたしの事だって信じて待ってくれたでしょ? だからだいじょう……」
「どうしてシオリはそうなの!?」

突然の叫び声にビクッと体が跳ねる。
それでもシェリアはお構いなしにわたしの両肩を掴んで、それから泣きながらも必死な様子でわたしに叫んだ。
それは叫ぶというより泣き喚くのにほとんど近くて、わたしは無意識に足を後退りさせる。

「どうしてそうやって笑うの! 最近ようやくわかったわ、あなたって泣きたい時にそうやって愛想笑いするの。良いのに、泣いてしまえばいいのに!」
「シェリ……」
「だってシオリはアスベルが好きなんでしょ!? 素直に不安だって言ったっていいじゃない! 私は嫌! シオリもアスベルもみんなみんな笑ってなきゃ嫌なのよ! 誰も失いたくない! ラムダだって……信じてあげたくたって……それでも……不安なんだから……っ」