51.約束、したから

油断したら、とか、そんなの関係なく泣いてしまいそうだった。
それでもどこか冷静に、泣けるシェリアは優しいなとか、わたしは素直じゃないみたいだから仕方ないよねと考える自分がいて、わたしはぐっと両手を握り締めた。
ゆっくりとシェリアを抱き締めて、声が震えてしまわないように言葉を発する。

「大丈夫。大丈夫だよシェリア」
「……な、にが、ぐすっ」
「アスベルは絶対に帰って来てくれる。だって、まだわたしとした約束が残ってるもん」
「ひっく、う、約束……?」

そう。約束。
まだ伝えられてないわたしの願い事と、それを叶える代わりに聞かなきゃいけないアスベルの話。
わたしはアスベルの話を聞いてないし、伝えてもいない。
だから、絶対に帰ってくるよ。大丈夫なんだよ。大丈夫。

「だから大丈夫。大丈夫だよ」
「うう……シオリ、シオリ……っ!」

繰り返し呟いて、ぽんぽんとシェリアの背中を叩く。
本当に、こんな風な女の子になれればよかったのに。
そしたらもっと早く……そこまで考えて、アスベルとソフィが少し離れた場所からこちらを見ているのに気付いた。
どうやらシェリアの説得に来てくれたらしい。ちょっとだけ羨ましいな、なんて思ってしまって、わたしは苦笑しながらシェリアを優しく呼んだ。

「ほら、シェリア」

トンと体を押して、後は任せたよとアスベルに目で訴える。
アスベルもこくりと頷いたのを見て、わたしは一人その場を後にした。