シェリアをアスベル達に任せて、てくてくと歩いていく。
アスベルならきっと説得出来るだろう。
安心して任せられる……のだけど、少し気分が重いのはなんでだろう。
シェリアにヤキモチ妬いてるとかだったらわたしは恥ずかしさのあまりちょっとフォドラに埋まってしまいたい。
「おや、シオリじゃないか」
ふと、呼び止められて見れば、リチャードとマリクさんが立っていた。
何か話していたらしいが、別に深刻な感じでも無さそうだったから、わたしは気楽に笑って近付いた。
「リチャードにマリクさん。二人ともまだ休まないの?」
「そろそろ休むさ。だけどマリクが君を心配していてね」
「お前の事だから、我慢しているんじゃないかと思ってな。いくらお前とラムダの繋がりが深くても、好きな奴の生死が関わるなら不安だろう」
「す、好きな奴って……」
「なんだ、周知の事実だぞ?」
「なんとなくわかってますけどハッキリ言わないでください!」
恥ずかしい! と赤くなる顔を隠すように手で覆う。
マリクさんにはこの半年、毎日のようにアスベルの事でからかわれていたのだ。やれ手紙だのやれ会いに行ってはだの……いややりたかったけどさ。できなかったへたれはわたしだけど、あれだけ揶揄われればわかる。
更にこの旅でのみんなの様子では、明らかにバレバレなのがわかった。もうこれアスベルにだって筒抜けなんじゃないかと思うくらいにバレバレだ。あそこまであからさまならわたしだってわかる。
ちらっと指の間から二人を見て、また隠して、ボソボソと言葉を紡ぐ。
「そりゃ……まあ、不安じゃない、というのは嘘ですけど……でもなんだかんだラムダはアスベルが大好きだから。だから大丈夫ですよ」
信じてます、と言えば、シオリ、と少しばかり低い声で名前を呼ばれた。
「オレは前に言ったな。人の意見や諦めを言い訳に使うなと。……それは、本心か?」
その言葉は、確か以前にウォールブリッジで聞いた言葉だ。
あの時、何もわからないまま“ラムダを守る”という無意識の行動をしていた時のもの。
今は?
今はもう、ラムダはアスベルが守ってくれる。わたしはただ、生きるだけ。
ラムダを信じるのは、“アスベルの意志”で、わたしは……
ゆっくりと顔を覆う手を離して、マリクさん達を見る。
どんな表情になってしまっていたのかはわからないけれど、わたしはやがてゆったりと笑った。
「……マリクさんがわたしのお父さんになってくれて、良かったです」
「む?」
「だって、ワザと痛いとこ突いてくるのって愛情の裏返しだとわたし思ってますし。でも本当に大丈夫です。大丈夫ですから」
大丈夫。
大丈夫だと言えば、黙って様子を見ていたリチャードが柔らかい笑顔で間に入ってくる。
「シオリ。僕達はもう休むよ」
「あ、うん。おやすみリチャード」
「シオリ。僕はね、君が結構好きだったよ」
「へ?」
突然言われた言葉にキョトンとする。
だが彼は相変わらず見事な笑顔のままだ。
「きちんと話すといい。僕達もそうして、何かすっきりしたから」
「後悔だけは、しないようにな」
そう言って、二人は歩いて行った。
確かにその背中に迷いは無かったけど……わたしはしばらくそこに、立ち尽くした。