「……パスカル。それは一体なんだい?」
二人を見送った後、何かの作業しているらしい動きをするパスカルを見つけた。
らしいというのは、わたしにはただ乱暴にハンマーを振り回しているようにしか見えないからだ。しかも振り回している相手を見て……どう反応したらいいのかわからなくて、わたしはとりあえずそう聞いてみた。
「お、シオリ。ねぇ、シオリも似てないと思う? あたしの秘密兵器のメカアスベルなんだけど」
アスベルなのか。
アスベルなのかこれ。
パスカルが示したのは、二等身のくせにわたしとそう身長が変わらないくらい大きな、明らかに鉄で出来たロボットだ。
カラーリングしてないせいか、なんか……なんか、似てない。
「……色つけたら、まあ、イメージ変わるんじゃないかな……」
「うーむ、まだまだ改良が必要だね〜、ありがとシオリ!」
にっこり笑って再び作業に戻る。
うん、パスカルらしいといえばらしいんだけど、なんかちょっと……不思議な気分だ。
和むような、誰かに同情したいような……
ふと、パスカルから少し離れたあたりで座るヒューバートくんを見つけた。なんだか落ち込んでいるようなたそがれているような、哀愁の漂う空気を纏っている。
……この二人の温度差は一体なんなんだろうか。
「落ち込んでいるヒューバートくんや、パスカルは何故敢えてアスベルで作ったのかね」
「……先程までの会話の結果としてなったそうです。あと、別に落ち込んでなんかいません」
「なんだい、フラれたの?」
「違います!」
からかうつもりで言えば、予想以上に強く否定された。
が、すぐにガクリとうなだれて、メガネを押し上げながらぶつぶつと呟き出す。
「……というか、伝わりすらしませんでしたよ。姉さんといい、その年頃の女性はこんなにも鈍いものなのですか?」
「え? よくわかんないけど……とりあえず、ヒューバートくんパスカルに告白したの?」
ひょいと言えば、ヒューバートくんは瞬時に顔を真っ赤にしてわたしを見上げた。
え、ちょ、まじか。
真っ赤になったヒューバートくんはなんか幼く見えて可愛い……じゃなくて、告白、したのか。伝わらなかったらしいけど。
なんだかわたしの方が誇らしくなってしまって、自然と浮かんでしまう笑顔に素直に従ってふにゃりと笑う。それからぽんぽんと頭を撫でれば、ヒューバートくんは顔をしかめつつも受け入れてくれた。
「あはは、頑張ったんだねぇヒューバートくん。伝わりにくいってわかっただけ進歩じゃん進歩」
「あなたはもう……だったら、姉さんこそ早く兄さんに告白してはいかがです?」
「は」
「少なくとも、事が済んだら伝える努力くらいしていただきたいですね。二人していつまでも……」
「ヒュ、ヒューバートくん。君は何を大それたことを……っ」
「いいですか姉さん」
ガッシリと腕を掴まれる。
真剣な目で見られて、わたしは思わずたじろいだ。
「あなたはもう、正式にエフィネアの人間です。それはあなた自身で選んだことだ。だからもう兄さんに想いを伝える事に遠慮する必要なんてない」
「ヒューバートくん……」
「それに、兄さんは絶対に帰ってくるんです。幸せに、なってもらうんですから」
最後の方はぷいとそっぽを向いて呟いた彼は、単純に兄の幸せを願う弟だった。
それが微笑ましいのに、求められてることが告白だと思うと素直に頷けない。
頷けないけれど、アスベルが幸せでいてほしいというのはわたしも同じ、だから。
「ヒューバートくんは本当にお兄さんが好きだね」
「まあ、嫌いじゃないです」
「ありがとう」
だから、笑った。
「……僕はもう寝ます。おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」