アンマルチアの里に着いて、わたしはホッと息を吐いた。
ラントからかなり行きやすくなったとは言え、やはり雪山は辛い。
無事に着いて良かったと思うと同時に、そういえば事前に連絡もしなかったから、パスカルがここにいるという確証はないんだよな、と今更気付いてしまった。
彼女が今大輝石の方にいたらどうしよう。最近はそちらで作業していることも多いみたいだったし、結構頻繁に帝都まだ顔を見せてくれることが多かったし……あ、ありえるかも。
「……パスカルはこっちにいるかな……」
「いた」
「えっもう?」
えらくあっさり見つかるもんだ……とソフィの視線の先を追えば、今からどこかへ行く予定だったのだろうか。
武器を手にしてて歩いていたパスカルが、パッと笑顔を浮かべるところだった。
素晴らしいタイミングだ。彼女は嬉しそうに跳ねながらわたし達の所へとやってくる。
「っあーソフィ! それにシオリも! うわあうわあなになにっどうしたの二人とも!」
「パスカルに会いに来たの」
「ソフィが、あたしに?」
「うん、あのね……」
「うきゃああああ! ソフィが“あたし”に会いに来てくれるなんて! 嬉しいよソフィ! あたしもずっと会いたかったの!」
よっぽど嬉しかったのだろう。
一回身を引いてから助走をつけるようにしてソフィに抱き付こうと飛び跳ねる。
もうちょっと落ち着いていればいいのに、あまりにも勢いのあるそれをソフィはひらりと避けてしまう。
「触るの、駄目」
「ああん、ソフィの照れ屋さん〜」
実に相変わらずである。
むしろ半年間ずっと会えなかった事によりパスカルのソフィ大好きメーターが上がったような気さえする。
……わたしも混ざりたいなぁ。
「そうだ約束! ちょっと待ってて!」
ハッと何かを思いついたらしいパスカルはくるりと体を回転させると、タッタッタッと小気味良い足音を立てて走り去る。
ソフィと二人で首を傾げると、少ししてまたタッタッと足音を立てながら何かをもって走ってきた。
「じゃっじゃ〜ん! ねぇシオリ、あたしとした約束、覚えてるよね?」
「ああ、遊ぶ約束?」
「そ! 今やっと研究が一段落したしソフィも来たしさ、みんなでトランプやろ!」
「わたしは、別にいいけど……」
ちらり、ソフィを見る。
わたしは構わないが、彼女の目的の達成を邪魔するのではと危惧してのことだが、ソフィはそんなのは知らないとばかりにわたしを見た。
「約束……シオリはアスベルとの約束は守らないの?」
「ぅえっ!? 今その話題!?」
わたしはソフィがパスカルの質問の答えを答えるのを待っていたというか、先に彼女の用事を終わらせるのかなとか、そういうことを考えていたんだけど……ど、どうしてここで急にわたしの話になったんだ。
道のど真ん中だというのに座り込んでトランプの用意を始めていたパスカルが、面白い物を見付けたとばかりに質問を繰り出した。
「なになに? アスベルとも遊ぶ約束?」
「ううん、お願い事をひとつ叶え合うんだって。前にアスベルが呟いてた」
「へ〜、お願い事ね〜」
「でも忙しいからまた今度って、今日も」
ああ……どんどん情報が流れていく……完全におうちの出来事を保育士さんとか先生とかにぺらぺら喋っちゃう子供のあれだ……
かといって、落ち込んでいたソフィが元気に話しているのを見ると止めるに止められず、わたしは器用にシャッフルしながらニタニタと見てくるパスカルの視線を受け止めるしかできない。
どうしようもなく恥ずかしくなりながらも隣に座って、ぐっと顔をしかめた。
別に守る気がないわけじゃない。デー……お出掛けに誘いたいわけだからそれ相応のタイミングというのがあって……
「……ちょっと、タイミングを逃したら今更勇気がね……無くてね……」
「シオリってば変にへたれだよね〜」
「へたれ?」
「臆病者って感じだよソフィ。肝心な所で決められない人」
「シオリはへたれ」
「ちょっと変なイメージ与えないでよ」
確かにへたれかもしれないけど!
せめて奥手と言ってほしい。
伊達に独り身の歴史と年齢が一致してないんだ。
そう、ブツブツと呟きながら、わたし達はポーカーを楽しみましたとさ。
……はて、これでいいんだろうか。