55.涙、ごまかして

後ろで扉が開く音がして、わたしは素早く身を翻してサイくんに抱き付いた。

「うあああんもうサイくん可愛いいいいいいいっ!!」

わざと叫ぶようにして彼に思い切り抱き着きながら涙を拭う。
よし、誰が入ってきたかわらないけれど、これでごまかしきれるだろう。
後ろで聞こえた呆れ声に、わたしは震えそうな体を抑えようと抱き締める力を強めた。

「……今度はサイが気に入ったのか?」
「え? あ、アスベルにソフィ。シェリアはどうしたの?」

入ってきた二人に、わたしははにかみながらそう問いかけた。
よし、いつも通りだ。
声も震えていない。大丈夫。
さっきまで泣いてしまったなんてこと、恥ずかしくて言えないからね。

「約束したから大丈夫って。だからね、シオリに……」

そう言って近付いてきたソフィがぴたりと言葉を区切った。
何事かと首を傾げると、彼女はしばらくわたしをジッと見た後に眉をひそめる。

「……シオリ、目が赤い」
「なにかあったのか? どこか……」
「あ、あはは……ばれちゃった? さっきその、頭をぶつけちゃって。それでサイくんが来てくれて頭を撫でてくれたの。その様子がもう、可愛いくって……それだけだから、大丈夫だよ」

じとー、二つの視線が突き刺さってくる。
全然、まったく、信じてくれていない視線だ。
それが耐えきれなくて、わたしはサイくんの後ろに移動してもう! と叫んだ。

「な、なんでそんな目で見るのさ!」
「シオリの大丈夫は信じられないもんな、ソフィ」
「うん、みんな言ってるよ。シオリの言う大丈夫は大丈夫じゃないって」

そ、そうだったかな……?
自分で自覚ないんだけど。
でも確かにそうだった気もするなぁと少し考えてみていると、アスベルがぽんとわたしの頭に手を乗せた。
そのまま無言で頭を撫でられる。
それがなんだかやっぱり泣きそうになってしまって、わたしはどうやってごまかそうかと、しばらく頭を悩ませた。