58.いつも、わたしたち

「待ちなさい! パスカル!」

もう休もうと、ベッドの代わりに使っている場所がある部屋の前まで行くと、バタバタと慌ただしい音をたててパスカルとシェリアが出て来た。
二人とも必死の形相だ。シェリアに至ってはナイフを投げてすらいる。
戦闘に近いその空気に、わたしは扉の外まで歩いて来たソフィにそっと近付いた。

「ソフィ、二人は何してるの?」
「パスカルをどうしてもお風呂入れさせたいんだって」
「あぁ、なるほどね」

シェリアとソフィがお風呂に入る→パスカルだけが入らない→パスカルが逃走→シェリアが戦ってでも入れさせると決意→現状……という流れだろうな。
前の旅でも二日に一回はそんなやり取りをしていたなぁと思わず笑ってしまう。

「大人しくしなさい!」
「音速の導師!」

のんびりと笑っているわたしたちとは別に、二人は相当本気のようで。
パスカルはシェリアが投げたナイフを素早く避け、更に遠距離から杖銃で彼女の詠唱を妨害する。
ああ見えて物理攻撃力は強いんだよな、とパスカルを見ると、彼女はぐるんと杖銃を回して、パスカルと同じくらいの大きさの物体を呼び出した。

「行くぜ相棒! れっつらごー! てってれ〜ドリームストライカーズ! ひゃっほおおおおおおおおおお」

呼び出したのはさっきのメカベルだ。
いつの間にかカラーリングまでしたのだろう。
それの背中に乗ってシェリアへと突撃し、そのまま彼女の後ろへと走り出した。

「ごめんシェリア、でもめんどくさいんだ〜」

タッタッタッと軽快な音を立てて走り去っていく彼女に、だがシェリアは立ち上がれないでいる。
さっきのは彼女の新しい秘奥義って感じだったからな、まあ仕方ないか……そう彼女に近付こうとした時、シェリアはいつもよりずっとずっと低い声で喋り出した。

「……シオリ。ソフィ」
「あ、はい!」
「パスカルを捕まえて! 今すぐに!」
「はい!!」

その声がなんだか怖くて反射的にそう答えると、わたしとソフィはダッと駆け出した。
自然に動いてしまった体にちらりとソフィを見れば、彼女も少し困惑したように走っている。
どうやらソフィも、シェリアのあの迫力に負けてしまったらしい。
わたし達は視線を合わせるとぷすりと笑った。

「シェリア、こわいね」
「そうだね。早くパスカルを見つけよう」