「うおっ?」
「おっと」
ずるりと滑ったわたし腕を、アスベルががっしりと掴む。
足元を見ればびっしりと苔が生えていて、どうやらこれで滑ってしまったらしいと息を吐いた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。随分と苔が生えてるね」
「地下にこんな空間があるなんて不思議……」
「こんなに綺麗な場所が存在するのか……」
シェリアとリチャードが漏らした感想に、わたし達は改めて辺りを伺う。足元だけではなく、生い茂った木も岩も、見慣れたそれらよりもどこか神聖な空気を纏っているような気がする。
あの荒廃したフォドラとは思えないほど生命力の溢れた光景が、そこに広がっていた。
「ここは生命力に溢れているな。一体どうして……」
「フォドラの核に近付いている証拠だね」
「フォドラの核に……」
「どうしたんですか? パスカルさんらしくない顔をしてますよ」
何か思い詰めたように言葉を紡ぐパスカルに、わたし達は揃って首を傾げる。
彼女は、どこか失敗したように笑った。
「ここには、植物も動物も生き物が溢れているでしょ。前に行ったお花畑でも思ったんだけどさ……」
「らしくないな。回りくどい言い方して」
「ここには、ひとつだけあるはずの物がないんだよ」
「あるはずの物って……」
それは、たぶん割とすぐに思い付く。
でもそれを理解するのはとても……とても、難しかった。
それを認めるというのは、わたし達の行動に対しての否定に近かったから。
でも、彼女はそれを呟いた。
「……人。ここには、人がいないんだ」
呟いたソフィに、みんなの体が強張る。
パスカルも今にも泣きそうな顔で頷いた。
「……そのとおり。人がいなければ、星はこれだけ自然豊かな場所になる。だから、フォドラは人を滅ぼそうとしたんだよ。たぶん、これはその結果を現した姿なんだ」
「そんな……」
「そして、その番をするためにリトルクイーンはフォドラの核から生まれた」
「今まで見てきた情報を統合すれば、確かにそうなるな」
「お姉ちゃんが言ってた生物の生存本能は核にも備わっていたんだよ。人が原素を大量消費した結果だね。フォドラはただ枯れていく事を必死で拒んだんだと思う」
「だとしたら、私達がしようとしている事って……」
「フォドラにとっては悪以外、何者でもないだろうね」
要するに、自分を守る事を邪魔されているわけなんだから。
「……どうやら、その悪を消すための番人がやってきたようだぞ」
マリクさんの言葉に、わたし達はキッと武器を構えた。
一瞬迷ったくせにすぐに戦闘体制に入るあたり、わたし達も自分を守るのに必死らしい。
空を開くように現れるリトルクイーン達もわたし達をまっすぐに見据えた。
「ヒトよ」
「滅びの時です」
「光り輝く」
「未来の」
「「「「礎となりなさい」」」」