68.青い、星の

「爆ぜよ、散れ!」
「覇道滅封!」
「我が前に広がる敵を殲滅せよ、ライトニングブラスター!」
「水煙、其は猛き蒼姫の落涙、地に降り注ぎ裁くは浄化の光……クロスウェイブ!」

6対と剣を交互に使い分けて、フォドラクイーンは器用にもわたし達の攻撃をかいくぐってくる。
だが、前よりも攻撃手段をすぐに変えているあたり、彼女もそろそろ追い詰められてきたはずだ。一つの攻撃方法にこだわっていてはわたし達に勝てないと判断した、ということだろうから。

「ローリングサンダーボルト!」
「逃がしませんよ、ユベルティ!」
「昇竜氷舞! 活心鋼破!」
「朽ち果てよ!」

自身を囲むように放たれた光が、大きく跳んだヒューバートくんの攻撃も下からのアスベルの攻撃も遮ってしまう。
だが逃がさないと執拗に迫ったソフィの足技はうまくかいぐぐったようで、フォドラクイーンの動きを少しだが止める。それで充分だ。

「満ちよ天光、開け黄泉の門、この名を以ちて出でよ! インディグネイション!」
「聖なる槍よ、十二の証と共に貫け! ホーリーランス!」
「爆破、其は大地の秘神、アブレイドバロウ!」
「来たれ数多の英知! 大地を辿り具現せよ! エイトセレスティアル!」

一斉に放たれた輝術が、それだけでいくつもの光が突き刺さり破裂し降り注ぐ。
虹色にも見えるそれらはさすがに防ぎきれず、フォドラクイーンは大きく息をすると後ろに下がった。
このままたたき込めれば……とほとんどが思ったろう。
しかし彼女は指を高く翳すと、追撃してきたアスベルとソフィに向かって振り下ろした。

「虚空に散りゆき、虚無へ消え去れ! デュアル・ザ・サン!」

フォドラクイーンを中心に飛び散っていく炎は、まるでその場に生まれた太陽のようだ。アスベルとソフィの体は簡単に吹き飛ばされ、さらに中衛にいたパスカルやヒューバートくん、リチャードまでもを巻き込んで炎を散らせる。
まだこんな、と思う隙も与えず突っ込んできた彼女の前に立ちふさがって、わたしは二本の剣を大きく振りかざした。

「星羽、双星……光星翼!」
「無駄だ! サンダーブレイド!」

これでもザウェートとベラニックを行ったり来たりして鍛えたのだけれど、足止めにもならないらしい。
だが時間は稼いだ。
にっと笑えば、後ろから高らかに声が響きわたる。

「私達は決して諦めない! リザレクション!」

シェリアが展開した魔法陣が地面を覆って、そこから昇る光がわたし達の傷を治してくれる。
再び立ち上がったアスベルは素早くフォドラクイーンの前に躍り出て、そして勢い良く抜刀した。

「力を貸してくれ、ラムダ! 天を貫く! 断ち切れ極光! 天覇! 神雷断!」

幾度も斬りつけて、そしてアスベルの声に応えるように拳がラムダの光を帯びる。
高く飛び上がって振り下ろした一撃は、アスベルとラムダの二人の力が乗算されているから相当のダメージを与えられたのだろう。
フォドラクイーンはよろよろと後退し、絞り出すように輝術を発動させる。

「ぐぅ、う……っ荒廃の風よ……プリズミックスターズ!」
「ぐあぁっ!」

彼女の表情に浮かぶ色からして、もうほとんど体力は残っていないだろうに。
まだこれだけの力を振り出せるらしい。
流星群のように襲いかかる幾つもの光に、一番近くに居たアスベルは思わず膝を着いた。

「星の狭間で己を恥じよ! ブライティスト・ゲート!」

目の前を覆うほどの光が続けざまに襲いかかり、回復役であるシェリアと、彼女を守ろうとしたリチャードとをその場に倒れさせる。

「原始の炎よ……エクスプローション・ノヴァ!」

先ほどよりも大きな炎が爆発を起こし、ソフィを吹き飛ばした。
三連発だなんて、と爆発の中心から遠くにいても感じる熱と衝撃とに動けないでいれば、フォドラクイーンはそれを嘲笑うかのように再び輝術を発動させる。

「常世の闇よ……マクスウェル・ロアー!」

ヒューバートくんとパスカルを巻き込んで発動するそれに、二人はその場に倒れ伏した。
次々と戦闘不能になるみんなにせめて回復アイテムを、と思うが、広範囲に及ぶ攻撃に上手く動くことが出来ない。

「滅びの時だ……ディメンジョナル・マテリアル!」

今度はわたし達に直撃だ。
後ろにいたマリクさんを庇うように武器を構えてもなんの意味もない。
全身を襲う痛み……というより、もはやただの衝撃、に、マリクさんがよろよろとその場に転がるように落ちる。
このままじゃ確実に全滅、だ。
そう思うと、急にエフィネアで見て来たいろんな人や物を思い出して……わたしは、遠のこうとしていた意識を振り絞って、倒れまいと踏ん張った。

「ま、けない……!」

視界も歪んでうまく見えない。
ふらつく足はトドメをさそうとやってくるフォドラクイーンから逃げられない。
力の入らない腕じゃ剣も振るえない。
それでも、治っていく傷が、ラムダに負けるなと叱咤されているようで、わたしは彼女をしっかりと見据えた。

「わたし達を……甘くみないで!」

剣でフォドラクイーンを振り払って、なんとか術を発動させようと構える。
わたしの剣技なんかじゃ無理だけど、術なら時間稼ぎが出来るかもしれない。
とにかくみんなを守らなけば。
みんながもう一度立ち上がれるように。
それでもフォドラクイーンは容赦なく自身の剣を振りかざしてくる。
間に合わない、そう思ったら、彼女の剣を弾くように一瞬、ほんの一瞬しか保たなかったけれど膜のようなバリアがわたしの目の前に現れた。
今のは、ラムダだったのだろうか。

「ぼく達が、遺恨を断ち切る……!」
「こんな、もので……僕達の意思は揺らがない!」
「オレ達には、譲れないものがあるんだ!」

詠唱しようとして、あちこちから力を振り絞って立ち上がる、みんなの声がするのに気付いた。
酷いダメージを負っただろうに、未だに強い意志を持った声が耳に届く。
みんなの声が、一つになって響く。

「夢を!」
「明日を!」
「未来を!」
「繋ぎ止めてみせる!」

みんなが思い描くのは、きっと自分の大切な人達。今まで出会ったたくさんの事。紡いできた自分自身。
たくさんの思いが、これからも未来に繋がっていく事を強く強く信じた声。
それらが決して術技を発動させているわけでもないのに、キラキラと輝く原素としてわたしの周りに集まるのを感じた。
それを急いでかき集めて組み立てて、そしてわたしは……いや、わたし達は高らかに声を上げた。

「ブルーアース!」

青い青い星から太陽が姿を覗かせるかのように、眩い光がフォドラクイーンへと向かう。
幾重にも重なった光が彼女を貫いて、そして辺りを強く照らした。
これは、未来への系譜。
これからも繋がっていく、わたし達の思い。

「そんな……馬鹿な……ぁ……!」

そして、フォドラクイーンはそこに崩れるように、倒れた。