72.それぞれに、ここで

久しぶりのユ・リベルテは、前よりもずっと綺麗に見えた。
まあ、初めてきたときは暑さでバテていたからぜーんぜん観光なんてできなかったから、その美しさも何もわからなかったし、あの大輝石を巡る問題以降、結局一回も訪れることが無かったのだから、当然と言えば当然なのだけど。
門の前に立って、ヒューバートくんは軽く手を上げる。

「たまにはラントに顔を出せよ。母さんも喜ぶから」
「そうですね。兄さんの結婚式には戻ると思いますよ」
「ななっ」

体を仰け反らせたアスベルに近付いて、二人は何かをひそひそと話し出す。
どこか喧嘩してるようにも見えるが、実にいい兄弟だと思う。
それはリチャードやシェリアも同じだったのか二人はくすくすと笑みを零した。

「やっぱり二人は兄弟だね。変なところが似ているよ」
「変なところ?」
「ソフィにもいつかわかるようになるよ」

一人首を傾げるソフィに、リチャードは優しく笑いかける。
それから、リチャードはわたしに話しかけてきた。

「シオリ」
「ん? なに、リチャード」
「君も、もっと素直に行動していいと思うよ」
「え?」
「どうやら君が素直になると、たくさんの人が幸せになれるみたいだしね」
「あ、と?」
「ね、シェリアさん」
「そうね。私も幸せになるもの」

ちょ、ちょっと待てなんの話だ?
そう問おうとして、でもなんかなんとなく答えが予想ついてしまって、わたしは口をぱくぱくと開閉させた。
だって、そんな、素直にって。
それはつまり、ええと、いい加減アスベルに大して素直に好意を示せということ……だと、思う。
黙り込んだわたしを二人は穏やかに見つめていて、わたしは気まずくなってアスベル達へ視線を移した。
そこには丁度、互いの拳を突きつけあう兄弟の姿。
二人は満足そうに頷くと、どこか晴れやかな笑顔で離れた。

「それじゃあぼくはこれで。また会いましょう、皆さん」
「じゃあね、ヒューバート」