「陛下、よくぞご無事で」
「心配をかけてしまったね。すまない」
城門の前でデール公とそうやりとりをしてから、リチャードはわたし達に向き直った。
わたしとシェリアと、アスベル、ソフィの顔をしっかりと見つめてからゆっくりと言葉を紡ぐ。
「今回のみんなとの旅で、改めて平和の尊さを知ることができた。ウィンドルに、このエフィネアに。そしていずれはフォドラにも。平和を……命溢れる未来を築いていきたい。そのために僕が知るべきことは、まだたくさんある気がするんだ」
それが、僕が守るべき世界のために出来ることだから。
そう微笑んだ彼に、自然とわたし達も笑顔になる。
こうやって笑いあえること。それ自体がとても尊くて愛しくて、そして頑張って手に入れた今だから。
だから彼は、彼の掛け替えのない友人に笑った。
「平和が戻ったら、また世界を回ってみたい。その時は、一緒に来てくれるかい。アスベル、ソフィ」
「行く!」
「ああ、もちろんだ。その時が来たら、もう一度ラントの裏山に集まろう」
「ああ」
「うん」
しっかりと頷き合う三人に、わたしとシェリアもにっこりと笑う。
きっと三人の友情はこれからも続くのだろう。
それこそ、永遠に。
「じゃあ、僕はここで。ありがとう、みんな」
マントを翻して城へと歩き出す。
立派なわたし達の王様を見送って、わたし達もと歩き出した。
途中の港へと続く階段まで来て、シェリアが一歩前に踏み出す。くるりと向き直った彼女は、もうお別れだと晴れやかな表情の中で告げた。
「さて……私は救護団に戻るわ」
「ああ。仕事、頑張れよ」
「また時間が合ったら会おうね」
「ええ。……私、救護団のことが一段落したら、お爺ちゃんを手伝おうと思うの」
突然の言葉に少し考えて、そう言えば彼女の祖父のフレデリックさんはラント家の使用人だったなと思い出す。
つまりはラントに戻って、使用人として働きたい……そういう事だろう。
「じゃあ、ラントに帰るの?」
「そこでどうしても叶えたい事があるの。ね、ソフィ」
「うん!」
「ソフィも知ってるのか?」
「知ってるよ。でも内緒なの。ね、シェリア」
「ねー」
シェリアとソフィは互いに笑い合う。
成長したソフィが相手だと、その様子はとても仲の良い姉妹のように見えた。
それがなんだか嬉しくて可愛くて、わたしもつい笑ってしまう。
ひとしきり笑ってから、シェリアはアスベルに強い笑みを向けた。
「アスベル、ちゃんと私との約束、果たしてよね」
「わかってるよ。まったく、シェリアは相変わらず心配性だな」
「いつまでも待たせるからよ。言われたくないなら、もっとしっかりするのね」
「はは、頑張るよ」
それから緩やかに手を振って、シェリアは階段を降り始める。
だがやがて何かを決めたように足を止めると、見上げるようにしてわたしの名前を呼んだ。
「シオリ! 私、やっぱりあなたが好きよ。きっと、他の何にも変えられないくらい」
だから、頑張って。
そう続いた言葉にわたしは目を丸くして、そしてやがてくしゃりと笑った。
「シェリア。わたしはシェリアの幸せになれるかな」
にっこり微笑んで返される頷き。
わたしも頷いて、そして互いに拳を突き出して……そして、互いの道を歩き出した。
「またね、親友」
「ええ。またね、親友」