ラントに戻れば、穏やかな風が頬を撫でた。
和やかな空気に目を細めて、そういえば今回の旅はここから始まったと少しだけ懐かしい気分になる。
わたしはゆっくりと息を吐いて、それから二人に向き直った。
「じゃ、わたしはお使いに行ってから帰るよ」
メロンとメロングミと、あと素敵な木を探すこと。
そう言えばアスベルは何か言いたげに言葉を詰まらせて、それをソフィが後ろからつんつんと押した。
「アスベル、約束は?」
「ああ……シオリ。えっと、だな」
「う、うん」
しどろもどろになってしまう言葉は、たぶん、約束の……その、デート、についてだとは思う。
思うのだけど、それを自分から切り出す勇気もなくてわたしも足踏みをしてしまう。
それが煮え切らなかったのか単純に呆れたのか、ソフィは一つ息を零すと一歩前に踏み出してきた。
「あのね、シオリ。わたしね、夢を見たんだ。シオリとアスベルの子供達と一緒に遊ぶ夢。寂しいけど、とっても幸せだったの」
ぎゅっと両手を握られる。
嬉しそうに話すそれは、誰の子供かは置いておいても、いつか必ずソフィに訪れる未来だ。
それを悲しそうに呟いていたソフィは、今はそれを嬉しそうに話している。
それがなんだか堪らなく嬉しくて、わたしは笑う。
「本当に、シオリとも家族になれたらいいのに」
そしたらね、とってもとっても嬉しいんだよ。
そしたらね、シェリアもアスベルもヒューバートも教官も、パスカルやリチャードだってラムダだって、みんな嬉しいって思うんだよ。
そう言葉を紡ぐソフィをじっと見つめて、アスベルは穏やかな声で問いかけた。
「……本当になったら、ソフィも幸せか?」
「本当になるの?」
ぱあっと笑顔になった自分の娘に笑いかけて、一つ目を瞑る。
そしてソフィの頭を優しく撫でると、アスベルはわたしの方へ近付いた。
「シオリ。俺も一緒に買い物に行くよ。ソフィは先に戻っててくれるか?」
「うん!」
「え? ソフィも一緒じゃなくていいの?」
「ああ、だって約束しただろ」
手を差し出される。
わたしから握ってくれと、手を。
「俺とデートしよう、シオリ」