かみさまかみさま、おねがいです。
どうかおねがいをかなえてください。
まほうつかいさんまほうつかいさん、どうかおねがいです。
おひめさまになれなくてもいいから、どうかおねがいをかなえてください。
「う……たた……」
鈍い痛みをお尻に感じながら、もそりと起き上がる。
その時触れた床はざわりとしていて、先ほどまでのそれとは全然違うことに気付いた。でも別に、まったく知らない感触ではない。これは芝生、だろうか。わたしはそこでようやく目を開いた。
予想通り、自分が座り込んでいるのは芝生の上だ。近くにある木と林でいまいち辺りの把握が出来ないが、広がる青空と風からして明らかに屋外だろう。
なんでこんな所に、と目を瞬かせれば、すぐ近くでまた違ううめき声がした。
……アスベルと、シェリアだ。
「う……ここは……シオリ! 大丈夫か?」
「怪我してない?」
起きるやいなや、二人して真っ先にわたしのもとへ駆け寄ってくる。
自分の事を優先してほしいのだが、と苦笑しながら、わたしはとりあえず無事だと立ち上がった。
「あ、うん……大丈夫みたい。むしろ二人は大丈夫なの? わたしはほら、すぐに治るけど……」
「大丈夫だ。落ちた時はびっくりしたが、そんなに衝撃は無かったな」
「それよりここは……」
アスベルにもシェリアにも怪我らしい怪我はないようで、ほっと一安心してから改めて辺りを見る。
穏やかな風に深い緑。
それから大きな風車があって……うん、スッゴく見覚えがある。
それは二人も同じらしく、確かめるように互いに顔を見合わせた。
「……ラント、か?」
「ヒューマノイドといい、ラントはよく落ちてくる場所なのかしら」
「それは……困るなぁ」
しょっちゅう落ちてくるとか、そんな非日常的日常なんていらない。
ていうかだいぶ慣れたとはいえ、わたしからすればもうとっくに非日常なわけで……未だに異世界ギャップに悩んだりするのに、これ以上は勘弁してほしい。
「だが、本当にラントならどうやって羅針帯に戻ろう。シャトルもないし……」
「もーっ! しんっじられない!」
アスベルの声を遮って、小さな子供の声が響いた。
甲高いそれは少女のもので、わたし達はつられるようにしてそちらを見る。
「どうしてそうやって私を置いていくの!? 一緒に行こうって行ったのに!」
「だってお前、すぐ体調崩すだろ。そんなやつ連れて行けるか!」
どうやら子供たちが喧嘩、というか、口論しているらしい。
三人ほどが集まってのそれは、男子に混じる少女が発端のようだ。
気の強そうな少女に、つっかかられた少年が苛立たしげに言葉を返す。
それを、気弱そうな少年がなんとか宥めようとしているようだった。
「あれって……あれ? なんかどっかで見たような……」
「ち、小さい頃の私達だわ……」
「え」
言われてみると、確かにラムダの記憶や先ほどの羅針帯で見た幼少期の彼らにそっくりだ。
遠いし、実物を見るのが初めてだったから気付かなかった……なんか悔しい。
「シェリア、兄さんはシェリアを心配してるんだよ。今日は街の中だけで遊ぶし、一緒だよ。ね?」
「そうだよ。今日は一緒なんだからいいだろ」
「ーっ二人の、バカーッ!!」
「あ、おい! 走るなよ!」
「シェリア!」
そう叫びながら駆け出した幼いシェリアに、幼いアスベル達はもちろん、わたし達もただ見送るしか出来なかった。