12.あなたに、魔法を

「ええと、つまりここは、昔のラントって事かしら?」

走り去った幼いシェリアを見送ってから、状況を確認するようにシェリアがそう切り出した。
ここは明らかにラントだし、先ほどの子ども達もアスベル達で間違いないだろう。

「たぶんそうだろうねぇ」
「時間が飛んだとは思えないし……ここも意外と羅針帯の中なのかもな」

さっきもいたわけだし、あながち間違いじゃないかもしれない。
そう頷いてから、だがやはり戻る方法はすぐには浮かばなくて首を傾げる。

「なら戻る方法もきっとあるはずだ」
「そうね、問題はそれだけれど……」

ぐすぐす、という泣き声と一緒にゲホッと咳をするのが聞こえる。
それはわりと近くの物陰でうずくまる幼いシェリアのものだ。正直気になってたまらなくて、どうしても生返事になってしまって、わたしはちらちらとそちらを見ては話に集中出来ずにいる。

「シオリ」
「わっ?」

こつんと額に何かが当たる。
それに意識を戻せば、アスベルが軽く小突いてきたらしい。
じっとわたしを見た後、ちらりと幼いシェリアを見る。

「そんなにシェリアが気になるのか?」
「え、えへへ……」
「気持ちは嬉しいけど、きっと何もしない方がいいわ。ややこしい事になりそうだし……」
「それは、うん……いや、でも、やっぱりちょっとごめん!」
「シオリ?」

ややこしい、とはたぶん、同じ時間軸に同じ存在が〜とかいうSF的な理由だろう。
わたしはいいとして、そこから二人に迷惑がかかったら大変だって、わかってる。わかってるけど……でも、我慢出来ない。
わたしは二人に早口に謝ってから、急いでそこから駆け出した。

「こんにちは!」

真っ直ぐに駆け寄って笑いかける。
当然だが、わたしを知らない小さなシェリアはひくっとしゃくりあげた後、おずおずと問いかけてきた。

「……だ、だれ?」
「ええと……魔法使い、かなあ?」

勢いだけでそう言って、自分でも変な人だなあと苦笑しながらしゃがみ込む。
彼女と同じ高さの目線で、わたしはにっこりと微笑んだ。

「泣いているシェリアを、笑顔にしにきました」