しばらく歩けば、少し広くなった空間にフレデリックさんが立っているのが見えた。
どこか怪我をした様子はない。しっかりと自分の足で立っている彼を見ればみんなの足も自然と早くなり、安心したと肩の力を抜いたのがわかった。
「フレデリック、無事だったか!」
「おお、アスベル様、シェリア。ご無事でしたか!」
「おじいちゃん、さっきは一体何があったの?」
「それは……」
「それにこのゾーオンケイジとは何だ?」
「ぼくたちにはわからないことが多すぎます」
「確かに俺たちは聞かなければならないことだらけだ。だが、それは帰ってからにしよう」
「いえ、今この場でみなさんにお伝えしなければならない事があります……」
「おじいちゃん……?」
一気に話しかけては早く帰ろうと手を引こうとしたわたしたちに、彼はゆっくりと首を振って、重々しく口を開く。どこか悲しそうにも見えるフレデリックさんに、早く帰ろうとしていたアスベルもシェリアも首を傾げた。
確かに、いろんなことは気になるけど、早く帰りたいという気持ちも本物なのに。少なくともフレデリックさんを安全な地上へ連れ戻してから、と思うけれど、彼はここにいないといけないのですと話し出した。
「まずは何からお話するべきか……ことの始まりは二百年ほど前です。未曾有の危機がこの世界を襲ったそうです」
「未曾有の危機……?」
「ゾーオンケイジの衛星絶対守護システムが暴走して……通称、大輝星竜(ソロモス)がジャイアント起動したのです!」
どうしよう。大変だ。
フレデリックさんが何を言ってるのかわからない。
ジャイアント起動ってなに。
「フレデリック……それは確かなのか?」
「きょ、教官はわかるんですか!?」
「ふっ……大人になれ、アスベル」
「教官は原素ハイの状態ですね。ぼくたちも少しずつ蝕まれるかもしれません」
「マリクさん……」
入り口からなんか調子いいと思ってたけど、原素ハイになってるのか。
どうやら長くいるとテンションもおかしくなる、あの深夜テンションと似たようなものになってしまうらしい。前一緒に住んでた時、寝不足だったマリクさんもこんな感じだった。
ゾーオンケイジこわい。
「すみません。話の続きを。それでその大輝星竜がどうしたのですか?」
「大輝星竜は地上の9人の勇者を集め、自らを含めた10人を十芒星戦士(テルマディケイト)と名乗ったそうです。そしてこの地上を滅ぼそうとしているのです!」
な、なんか話が壮大になってきた。
すごくファンタジーで厨二みたいなのはいいんだけど、えっと、どう反応したらいいんだろう。
「ふ、フレデリック……? どうしてお前がそんなことを知っているんだ?」
「ここに連れて来られてから独自に調査を致しました」
「さっすがフレデリックだね!」
「へ、へえ。独自に調査か。すごいな」
「いいぞ。飲み込みが早いなアスベル」
「マリクさんちょっと黙っててください」
戸惑っているのはわたしとアスベルくらいのようだ。
いや、シェリアもか。むしろシェリアに至っては理解できないと呆然としている。
「アスベル様! お願いがございます! 私と戦ってください!」
「な、何を言い出すの、おじいちゃん!?」
「私は不覚にも先ほど大輝星竜にノパーソを奪われてしまいました!」
「あ、忘れてた! ノパーソ取られちゃったの?」
「はい……ノパーソには誰の目にも触れてはならぬものが詰まっております。あれを、なんとしても取り戻さねばなりません!」
「ちょっと待ってくれよ。どうしてそれがお前と戦うことになるんだ?」
「私が十芒星戦士に選ばれてしまったからです!」
「フレデリックさんが!?」
どうしてこんなおじい様を選んだの!
確かにフレデリックさんなかなかかっこいいけど! でもおじい様だから! 戦士じゃないから!
叫びたいけど叫べない。叫んでたら話が進まない。飲み込めと言われたので必死にこらえて会話を見守る。
フレデリックさんはやけに重く悲しそうだった。
「大輝星竜に会うには、十芒星戦士のうち9人を倒さなければ叶わないのです! そして大輝星竜に会わない限り、私がここから真に解放されることはありません」
「そんな、フレデリックが……」
「やだ、フレデリックと戦いたくない!」
「おじいちゃん……」
「ぼくたちはなんて悲運に巻き込まれてしまったんだ」
「話は大方わかった……フレデリック。すまないな」
「あ、あれ……なんかすごく……切なくて悲しい話になってるの……?」
「では戦うぞ、みんな!」
情報が多いな、と理解することを放棄しそうになっている間に、アスベルとわたし以外のみんなが武器を構える。
それはもう自然に。悲壮な顔をしながら仕方ないよねとばかりに。
「は……はい!?」