今日も今日とてどこかに落ちる。
悲しいことにもうすっかり慣れてしまったわたしたちは、最初のように混乱も動揺もすることなく辺りを見回した。
今わたしたちがいるのは、かめにんがたくさんいる場所。
亀車があちこちに停めてあったり、めったに見ないこかめにんがいたり、テントを張っていたりと、たぶんかめにんの本拠地か何かなのかなと思うくらい、かめにんだらけ。
「ここは……かめにんがいっぱいだな」
「かめにん本舗……かな。確か、世界中のかめにんの拠点で、ここに一度商品が集まるっていう話を聞いたことある」
前に友達になったかめにんから、そんな話を聞いたような気がする。その噂に違えずかめにんでいっぱいのこの場所は、至る所に積み荷が置いてあって、そこから武器やグミが見え隠れしている。
暫く辺りを見回していたわたしたちだったが、ふと、アスベルが積み荷に向かって歩き出したかと思うとそこから一振りの剣を取り出した。
「これ、親父の剣だ」
そう言って掲げた剣は、どこか豪華な装飾の鞘に収まっている。赤地に黄金の飾りは豪奢で、でも本来の機能を忘れてはいないのか、すっきりとしたデザインになっている。
アスベルは懐かしそうに目を細めると、穏やかな目で微笑んだ。
「懐かしい。小さい頃に使ってたんだ。何故か鞘から抜けなくって、そのまま振り回していたっけ」
「へぇ。その頃から帯剣技だったんだね」
「そうなるのかな。騎士学校に入るために売っちゃったんだよな……」
まさかまた出会えるなんて。
そう呟いたアスベルにいてもたってもいられなくなって、わたしは側を通りかかったかめにんに話しかけた。
「あの、これって買い戻せませんか?」
「シオリ? そんな、気にしなくても……」
「こんな所でせっかく再会出来たんだよ。いいじゃない別に。それに、お父さんの剣なんでしょ」
アストンさん。
アスベルとヒューバートくんのお父さん。ラントの前の領主で、わたしが出会うことなく死んでしまった人。
「わたし、アストンさんには会えないから。せめてこの剣には挨拶したいの」
厳しいせいでわかりづらかったけれど、とても優しい人だったと聞いてはいる。けれど、話したこともなければ、姿だって肖像画でしか見たことがない。
……その、一応、家族になるのだし。マリクさんとはまた違う意味でお義父さんになるのだから、ちゃんと挨拶したいって思うのは当然なわけだし。
だから、と伝えれば、アスベルは少しだけ驚いて。
それからふわりと、わたしの大好きな笑顔で笑ってくれた。
「シオリはやっぱり変わってるな」
「えー、そんなことないよ」
「でも好きだよ」
にっこりと笑顔のまま続けられて、うっと息をのむ。
うおお、ずるい。それに弱いって知ってるだろうに。
「……あのー、質問にお答えしてもいいっすか?」
「えっあっはい!」
「すみません!」
居心地悪そうなかめにんの声に、そういえば呼び止めたままだったと慌ててそちらに向き直った。
かめにんはどこか呆れたような目をこちらに向けてきたけれど、一つ咳払いをするとアストンさんの剣をアスベルから受け取った。
「この剣ですけど、つい最近伝説の原素の剣・エクスカリバーだと判明したっす」
「エクスカリバー? ってあの、突き刺さってるやつ?」
「王家の剣っすよ。なもんで、100万ガルドは最低でも欲しいっすね」
提示された金額に思わず黙る。
何今の金額。0がいくつあった?
「さすがに……」
「それは……」
「もしくはそうっすね。ちょっと頼みたいことがあるっすけど……」
それはなんだと聞くと、どうもかめにん界隈での問題児がいるらしい。
かめにんの制服とは少し違う黒い服を着て、黒いトータスを連れては、積み荷の縄を解いたり不法入国の手伝いをしたり……なんか地味なのか派手なのかわからないイタズラなどをしている、ちょっと反抗期なかめにんなのだそうだ。
今は行方知れずになってしまったとのことで、見つけ次第ちょっと叱ってやってほしい、とのことである。
「なるほど黒いかめにん。その子を公正させればいいんですね」
「っす」
「シオリ、そこまでしなくても……」
「大丈夫。アスベルとアストンさんの大事な剣だもん。任せて!」
絶対取り戻すんだから、と意気込むわたしに、アスベルはちょっと困ったようにしつつも、愛しそうに剣の鞘を撫でた。