今回は途中で落ちるなんてことはなく、すんなりと大輝石竜のもとに辿り着いた。
わたしたちを見下ろすように浮かぶのは少年の形をしている。
てっきり竜の姿をしているのかと思ったけど、どうやら違ったらしい。頭部から角は生えているものの、どう見ても少年の姿だった。
「角っこショタきたー!」
「ああ……シオリもついに……」
思わず叫んだわたしに、アスベルがうなだれる。
いやいや、だって、アスベル、わたしエフィネアに来て初めて見たよ。いろんな魔物とかラムダとか見たけど、角っこなんて初めて見たよ。
体も顔も何もかもが人間なのに角という異種族の象徴をその身に生やしていて、人間ではないのだと主張しているんだよ。確かにこれだけでは猫耳とかけもみみの類と変わらないかもしれないけど、そちらはもともと愛玩対象でもある可愛らしい動物の一部であるから「可愛い」という形式になるんだ。けれど角はそうじゃない。角という鋭利的なものは攻撃性も高いことから、どちらかというと畏怖の対象に選ばれることが多いんだ。シカとかサイとか可愛い子もいるけど、よく異形の怪物とかに角の描写ってあるでしょ。でも猫耳生やした怪物なんてそうそうないでしょう。それがそのパーツが与える印象の差なんだよ。
だけど恐怖にこそ愛情を宿す人がいるように、そんな恐ろしい角を人間が、それも少年といった子供が持っているというところがポイントなんだ。それに可愛いし。なんというかエフィネアってやっぱりレベル高いよね。
口には出さず、そんな感じのことを思いながらアスベルを見る。
アスベルの小さい頃も可愛かったなあ、なんて思ったのが伝わったのだろうか。
アスベルは少しだけ頬を赤らめて視線を外すと、上空の大輝石竜を睨み付けた。
「お前が大輝石竜か! ……あー、えっと、その、」
「地上を滅ぼさせないためにここに来た……じゃなかったかしら?」
「あと、ノパーソね」
そうだ、それだと頷くアスベルに、やっぱりここに来るまでにみんな目的忘れちゃったよねと安堵する。
わたしも忘れてたし。
「いかにも。我、大輝石竜。大輝石を束ねる守護竜の長にして、色輝竜が始祖」
「古めかしい喋り方だ! ショタジジイってやつかな? いいよ大丈夫守備範囲内だよ!」
「ちょっと黙ってて!」
ぺしんとシェリアに叩かれたので黙る。
「ノパーソとはこれか? くだらぬ、旧き知のアンマルチアが玩具よ」
「ありゃ、意外に簡単に返してくれるんだ」
ひょいと投げてよこされたノパーソは、少し丸っこいものの、やはり小型のノートパソコンといった形だった。
それをしっかりと見届けて、今度はヒューバートくんが大輝石竜に声をかける。
「一つ聞かせてください。あなたは何故地上を滅ぼそうとしているのですか?」
「周章狼狽……何を勘違いしている? この星を救おうとしているだけよ。そう、我はこの空の海とエフィネアを統べる衛星絶対守護システム。地上ではラムダが暴れまわり、フォドラではリトルクイーンが暴れていたようだが……我は……我の法にて地上を守護するが役目だ」
「あなたのは守るとは言わない。破壊っ!」
「より多くの原素をここに集める必要があるのだ。待っていろ。地上の家畜どもは皆殺しだ!」
「笑わせるな! お前の計画は頓挫する! このオレの手によってな!」
マリクさんが強く宣言して武器を握る。
それにヒューバートくんもソフィも、シェリアもみんなが同じように武器を構えた。
「ぼくを甘く見ない方がいい」
「もう逃げ場などない!」
「望むところ」