「十芒星戦士に会わずにすんなり大輝石竜のとこに行けたと思ったら、フェイントか……」
さあ帰ろうとみんなで入り口まで戻ったはずなのに、何故かわたし一人見知らぬ場所に落とされていた。な、なにが起こったのかわからないと思うがわたしも……って、このネタはもう古いのかな。
とりあえず立ち上がって、辺りを伺う。
武器はちゃんと手元にあるから、何かあっても大丈夫だろう。けれど魔物の気配は感じられず、草に覆われた何か大きなものの残骸がそこにあるだけだ。
「ええと、これは……シャトル?」
見覚えがある、とぐるりと周りを歩くと、わたしがこれから乗るはずだったシャトルに似ているんだと気付く。
でもどうしたこんな場所に、と手を伸ばしたところで、脇に盛り上がっていた土から何かが這い出してきた。
それは人の形をした小さな影だった。
「君は……!」
「イキ……ロ……イキ……」
人の形をしたそれは、だが限りなく人間ではなかった。
焼け焦げた体はぼろぼろで、ただの布切れになった服の間から見えるのはロボットのような機械が剥き出しになった腕だ。繰り返す声もブツブツとノイズの混じった音声で、綺麗だったろう顔は片方が剥がれ落ちてしまっている。
そしてそれには見覚えがあった。
小さな子供の体。淡い色の髪。ほとんどわたしの嫌いな無機質な機械なのに、なんだか愛しくなるこの感覚……ラムダだ。
フォドラにいた頃、ラムダが器に使っていたヒューマノイドだ。
『待て。近付く必要はない。』
「ラムダ……っ!?」
近付こうとしたわたしを制止した声に立ち止まると、ラムダだったヒューマノイドは限界を迎えたのか爆発してしまった。
カラカラと部品が転がってきて、また辺りは静かになる。
『かつての入れ物だ。我はここに落ち、そしてエフィネアの星の核を目指した。』
ラムダの声がする。
わたしを生かして、このエフィネアに連れてきてくれた、寂しがりやの声が。
わたしにコーネルさんを重ねようと、無条件にラムダを愛しく思わせるようなことを無意識にして、わたしに自分の一部を植え付けて、必死に生きようとしたラムダの声が聞こえる。
ここにはアスベルはいない。
けれど、わたしとラムダは話すことができるようだった。
ラムダはぽつぽつと話す。
今もリトルクイーンたち……フォドラクイーンと一緒に話をしながらゆっくりと微睡んでいる彼が、ただの部品になってしまった入れ物を見て、ぽつぽつと。
『コーネルが、生きろと言ったから。』
……ラムダはずっと、それだけだった。
わたしは無言で飛び散った部品を拾い上げて、ひたすらに集めた。
それからシャトルの近くに落ちてた機体の板で穴を掘る。そこまで深くはないけど、この集めた部品が全部入るように、穴を掘る。
しばらく無言で作業をして、それからふと思い出したようにラムダを呼んだ。
「ラムダ」
『……』
「ありがとう」
『何に対しての礼だ。』
「んーと、いろいろ。それとごめんね。わたしは結局、あなたを置いて死んでしまうから」
あなたを愛してあげるためにここに来たけれど、所詮は人間だから。
まだあの治癒能力はあるけれど、ただ怪我が治りやすいってだけで、やっぱり、最後には死んでしまうから。
「ソフィやリトルクイーンをよろしくね。いいお兄ちゃんになるんだよ」
『何を言っているんだ、お前は。』
「家族の話」
今、ラムダはアスベルの中にいる。アスベルの中で、フォドラクイーンやリトルクイーンの意識に大事に話しかけている。
そして、ソフィがいる。
可愛いソフィ。アスベルとわたしの娘になったヒューマノイド。リトルクイーンの力で成長した、ラムダを殺すプロトス1。でも、今はただの女の子。
ずっとずっと未来まで、わたしたちを見守ってくれる大事な女の子。
わたしは部品をすべて穴に埋めると、大事に土をかけて、そこにちょうどいい石を置く。
これはラムダの墓だ。
かつてのラムダの。
かつて疎まれ罪をなすりつけられ、守ってくれた大切な人を失い、その約束のために生きようとして、このエフィネアを滅ぼそうとしてしまった、可哀想な生き物の。
だから、今の……もう、ちゃんと誰かと生きられるラムダに、わたしは笑いかけた。
「ラムダも大事な子だから」
ソフィと同じで、家族の一人だと。
ラムダがどんな顔でそれを聞いてるかは知らないし、そもそもラムダの姿なんてどこにも見えないから、わたしは作った墓石を撫でながら話す。
『せいぜい幸せになるんだな。シオリ。』
でも、ちゃんとラムダが言った言葉が聞こえたから、わたしはふにゃりと笑った。
「ラムダも。幸せになろうね」