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「よく来たのう、ロイド」

急いで訪れたコレットの家では、彼女の祖母であるファイドラさんと父のフランクさんが待っていた。
彼らに招かれて入る家は、いつもと変わらない。なんだったら、町の中も静かで穏やかだ。いつも通りの日常がそこにある。そのことに、本当にコレットはロイドに告げた時間よりももっと早くに旅立ってしまったのだとわかってしまって、ロイドは悲しそうに眉を下げた。

「コレットの奴、俺に時間を間違えて教えたのか?」
「……そのことで、コレットから手紙を預かっているよ」

フランクさんが部屋の引き出しから取り出したのは、彼の申告通り、コレットからの手紙だ。
この世界に、デザイン性のある可愛い便箋なんてないから、それもただの質素な紙である。でも、表面に綴られている文字は間違いなくコレットのものだった。
ロイドはわたしたちにもわかるように、それを声に出して読み上げる。



親愛なるロイドへ
これをロイドが読む頃には、私はもう旅に出ています
ごめんなさい。私はロイドに嘘をつきました
世界再生の旅は、今まで大勢の神子が失敗してきた危険な旅です
大好きなロイドを巻き込みたくなかったの
私が頑張って魔物やディザイアンを鎮めるから、ロイドは再生された世界で平和に暮らしてください
今まで仲良くしてくれて本当にありがとう
ロイドにめぐり会えて、私は幸せでした
さようなら。
コレット



読み終わって、ロイドはぐっと手紙を握り締めた。
ぐしゃりと曲がったそれを慌てて広げて、それから悔しそうに歯噛みする。わたしもジーニアスも、思わず視線を下に落とした。
だって、おかしい。再生された世界で……って、まるでそこにコレットはいないような書き方だ。彼女はいつだってロイドのことが大好きだったから、世界を再生した天使になっても、ロイドに会いに来てくれるだろうって思っていたのに。
その手紙に綴られた未来に、彼女の姿はどこにもない。いくら失敗する可能性があると言っても、これじゃあ絶対に、もう会うことはないって、言っているみたいだ。

「……なんだよ……こんなのまるで、遺書みたいじゃねえかよ……」
「遺書……か。そうなのかもしれないな」

フランクさんが悲しそうに目を伏せた。
その様子に、ざわざわと胸騒ぎがする。世界再生が成功したら、コレットは死なないはずなのに。ディザイアンに殺されないように護衛だっているのに。どうしてそんな風に、悲しそうに、諦めたみたいに、目を伏せるのだ。
ジーニアスもたまらず問い詰める。

「それ、どういうことなの?」
「遺書かもしれないって……」
「ロイド。ジーニアス。ナギサ。村のみんなにも隠していたことがあるんだよ。コレットは……いや神子さまは、もう……」

フランクさんが何かを言おうとした瞬間、家を揺らすほどの轟音が響いた。地震ではない。もっと、何か衝撃みたいなそれ。
同時に悲鳴が耳をつんざいて、わたしはぶるりと体が震えるのがわかる。
だって、これ、わたし、知っている。覚えがある。地面が揺れる感覚も、聞こえてくる悲鳴も、まだ覚えている。
思わず扉を開いて外に飛び出すと、ああ、ほら、やっぱり。
あの日、ミトスくんたちとお別れらしいお別れもできなかった日と同じ。何かに襲撃されたように、家が崩れて炎に包まれるイセリアがそこにあった。