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トリエットで評判の占い師曰わく、再生の神子様ご一行は、イフリートの暴走で滅んだかつてのオアシスへ向かったらしい。
お供の方が話していたのだから間違いないと息巻いた彼女の情報は、明らかに占いではなかったけれど。まあ、会話を聞いたと言うのなら、占いよりもよほどはっきりとした情報だから、問題はない。いや、きっちりと100ガルドをぼったくっていったのは問題だと思うけれど。

彼女の本業だという恋愛占いについては何故か無料でやってくれたけれど、それもなんだか先ほどのせいでいまいち信じられなかった。
そもそも「数千年を越えてあなたを想い続けてる人がいるわ。その人はたくさんのものに押しつぶされながらも、あなたを支えにして生きてきたみたい。早く抱き締めに走ってあげて!」とはどんな結果だ。なんかわたしの知ってる恋愛占いとは違う感じがする。

「待て!」

そう鋭く声をかけられたのは、町の外に出ようとした時だ。
数人のディザイアンがこちらに近付いてくるのが見えて、さっと背筋を冷や汗がたれるのを感じる。

「こいつ、手配書に似てないか?」
「ちょっと待て。確かめる……そっくりだ!」
「良かったね。男前だってさ」
「……あんなに酷いか? 俺……」

どこか嬉しそうに手配書と見比べて騒ぐディザイアンに、もうなんの言葉も出ない。
確かになんとなく特徴はとらえているような気もするけど、あんな間抜けなフォルムではないよなあとも思うし……いや、ここってみんな美形ばっかで目が肥えてるから、ロイドはあんな風に見えるのかもしれない。
ロイドもがっくりと肩を落としては、もう何も言うまいと首を振る。

「貴様、ロイドだな!」
「……ああ、そうだよ」
「あれ? いつもの「人に名前を尋ねる時は……」ってヤツ、やらないの?」
「やる気も失せるっつーの」
「ふふふ……ここまでそっくりな手配書を回されては、ぐうの音も出まい」
「まあ、特徴はとらえてる絵かな」
「本気で怒るぞ!」

ぽかりとジーニアスを小突いてから、ロイドは町の出口まで走る。
町から出て、少し離れたところでようやく剣を抜いた彼は、イセリアのことを思い出して町から離れたのだろう。前回の反省を生かした行動に、彼は言うほど頭が悪いわけじゃないんだよな、と感心した。
結果として、今回は大きな騒ぎになる前に倒すことが出来たけれど、今後もこういう気配りは大事になるだろう。たとえさっさと戦闘が終わったとしても、流れ弾や人質とか、いくらでも巻き込まれる可能性はある。神子だけでなくロイドも追われていることが確定になったし、今後は常に退路の確保や戦う場所も気にしなくては。

「フフン。口ほどにもないな」
「ロイド。あまり油断してると、いつか痛い目にあうよ」
「油断なんてしてねえよ。ただ大勢でかかってきたわりにあっさりやられたなって」
「そういうのを油断って言うんだよ」
「……うわっ!?」
「ロイド!?」

周りに気を付けよう、と思った直後なのに。いつものように、戦闘後の軽い言い合いをしていると、突然ロイドの体が青白い電撃を帯びて痙攣した。
そのままあっさりと気絶して倒れた彼に息を飲む。いったい何が、と思う間もなく、わたしもぐいと腕を強く引っ張られて、後ろ手で拘束される。かろうじて振り返って、それがディザイアンだとわかって呻いた。
やけにあっさり倒されたとロイドも言っていたけれど、どうやら背後で待機していたらしい。彼らはロイドを担ぎ上げて、ついでにとわたしたちにも手錠のようなものをかけていく。

「ちょっと、離して!」
「うわあっボク、こわい! お願いだからぶたないでぇっ!」
「ええい、大人しくしろ!」
「ぐ……っ!」

抵抗しようとするけれど、びりりと電撃のようなものが体に走ったかと思うと、一気に体から力が抜けた。
あ、やばい。たぶん、ロイドが受けたのと同じものを受けたのだろうけれど。視界が真っ黒に染まって、少しの吐き気を感じながら周りの声がどんどん遠くなる。
最後にジーニアスが泣き声を……聡明で自分を守る術を知っている彼だから、たぶん嘘泣きだろうけど……あげるのを聞きながら、わたしはディザイアンのひとりに担ぎ上げられたところで、意識を手放した。