25-1

トリエットの宿に戻ってから、とりあえずクラトスさんとロイド用にと取った部屋に集まる。
残りの部屋割りはわたしとコレット、セイジ姉弟だ。二人部屋に全員が集めるのはちょっと窮屈だったけれど、あらかじめ用意していた食事をとりながら、これまでの経緯を共有する。

そもそもコレットたちが駆けつけてくれたのは、やっぱりジーニアスが彼女達との合流に成功したからだった。といっても、実際に見つけてくれたのはノイシュの敏感な鼻だったらしいけれど。さすがはロイド曰く犬である。というか、そんなに鼻が利くなんて知らなかったよ、ノイシュ。
わたしたちの予想と調査通り、神子一行は火の封印を目指していたけれど、話を聞いたコレットの強い意志で、旅を中断してロイドとわたしを助けに来てくれたらしい。彼女を守るはずが助けを求めているみたいだ……なんて冗談で言っていたけれど、本当にその通りになってしまった。
そして、わたしたちがしてしまったこと……人間牧場でのことと、イセリアのこと。それを話した時は、どうにも空気が重苦しくなってしまったけれど。リフィルさんにその行為は道徳的には正しいことだけれど、法の秩序には反していた。そうして失ってしまったものがあるのなら、背負っていくしかない。これからの未来はいくらでも自分次第で変えることができるはずだと、そう諭されて。
コレットの希望もあって、わたしたちはこれからも旅に同行させてもらうことになった。

ひとまずは安心、だけれど。大変なのはこれからだ。わたしたちはもう、マーブルさんのような人を出さない。助けたい。ロイドとジーニアスはそう強く誓っている。
わたしも、あんな優しい人があんな怪物になってしまうなんて恐ろしいこと、起きてほしくない。かつてミトスくんと話したような世界を目指して、きっと、今のわたしができることもあるはずだと、そう信じて。
もう直接、彼らとの約束は果たせないけど……彼の夢に共感したことは事実だ。一人でも、わたしにできることをしていきたい。そのためにも、世界再生の手伝いをするのだ。

情報共有が終わって、これからの方針もなんとなく話し終えたところで、リフィルさんが一つの石を取り出した。それはボータの剣についていて、かつリフィルさんが持ち帰ってきたものである。

「あの剣に着いていたこれがエクスフィアなのよね。私たちの潜在能力を引き出す増幅器なのね。私も……使えるだろうか」
「難しいだろう。エクスフィアは要の紋がなければ人体に有害なだけだ」

さっとジーニアスが目をそらした。
たぶんマーブルさんのことを思い出したのだろう。彼女のために作った要の紋は、今はジーニアスを彼女の形見のエクスフィアの毒から守ってくれている。

「あのぉ……要の紋って作れないんですか?」
「先ほど話した通り、要の紋というのは抑制鉱石を加工して、表面にエクスフィアを制御するための紋章を刻んだ装備品のことだ。ドワーフの間に伝わる秘術だと言われている」
「ああ。その呪い……っていうか紋章は、俺でも彫れるんだけど、抑制鉱石の加工は親父にしか出来ないんだよ」
「ねぇ? 抑制鉱石というのはこの中にないのかしら」

ごろごろと音を立てて、リフィルさんはどこからともなく取り出した壺やら剣やらを床に並べ始めた。
どれも古めかしく、今現在使われているものとは思えない。骨董品だろうか。どちらにしろ旅には関係のなさそうなものだけれど、どこかで買ってきたのだろうか。
みんなで不思議そうにそれらを眺めていると、ジーニアスが呆れた声を出した。

「姉さん! これ家から持ってきたの?」
「当たり前です。貴重な研究品ですからね」
「うわあ……」
「がらくたばっかりじゃん」
「なんですって……?」

ロイドの呟きに反応してリフィルさんが立ち上がる。その後始まる話はもちろん、この研究品のすばらしさについて、だ。
正直わたしもよくわからないけれど、こういう古いものとかがマニア系の人からすればお宝の場合もある、というのはわかるので何も言わない。その人にしかわからない価値なんてたくさんあるしね。
でも本当に古めかしいと言うか、丸い石に壺に剣に何かのかけらにと、本当に種類問わずあちこちからかき集めてきたとばかりのラインナップに、どう反応すればいいのかわからない。変に触って壊したらどうしよう、と恐る恐る眺めていると、ふと、黙ったままだったクラトスさんが、球のような何かを掴み上げていた。

「ああ、それは人間牧場の前で拾ったのよ。天使言語が彫られていたから持ち帰ったの」
「先生! これ、要の紋だよ」
「しかし途中で紋章が擦り切れている。このままでは使えないぞ」

クラトスさんから要の紋だというそれを受け取って、ロイドはじっくりとそれを見る。
この中に本当に紛れていたなんてすごい幸運だ。ぜひとも無事に修復してほしいけれど、どうだろう。
少し緊張した様子でみんながロイドを見れば、彼はぱっと表情を明るくした。

「……これくらいなら俺でも直せるよ。大丈夫、明日には先生もエクスフィアを装備できるよ」
「本当!? お願いするわね、ロイド」

じゃあ、今日はもう寝ましょう。
欠伸をもらしたコレットを見ながらそう言えば、彼女は恥ずかしそうにはにかむ。
今日はいろいろとあったし、もう休んだ方がいいだろう。明日からも、まだまだ旅は続くのだから。
そうして改めて明日の時間を確認し合った後、ジーニアスはリフィルさんと、わたしはコレットと共に部屋を出た。