「エクスフィアかあ……わたしとコレットはつけてないんだよね」
借りた部屋に戻ってから、わたしはなんとなくそう話をふってみる。
ロイドとクラトスさんはもちろん、ジーニアスはマーブルさんの形見を付けているし、先生も明日にはエクスフィアを装備できる。
そしてコレットの胸に輝いているのはクルシスの輝石だから、エクスフィアではない。このメンバーで着けてないのはわたしとコレットだけなのだ。
かといって今さら着けるのも難しい。そもそも現状、はっきりと確定している入手経路が「ディザイアンから奪う」ことしかないので、着けたくても着けられるものじゃない。あれってどこで見つけて、どこで加工しているのだろう。ダイクさん以外にもドワーフっているのかな。
上衣を脱いでベッドに入ろうとしていたコレットが、そうだねえ、とのんびりと答えてくれた。
「そだね。でも、ナギサは十分強いからだいじょぶだよ。私もナギサを守るから」
「いや、わたしが守るから。わたしの方がお姉さんだし、慕ってもらってるみたいだし……絶対に守るよ」
「ありがとう……ごめんね。嘘ついたのに。それにお父さまもおばあさまも……私も。みんなの追放を止められなくて」
そう、しゅんと俯いてしまった彼女に、わたしは慌てて首を振る。
そんなの気にすることじゃない。これは、あくまでわたしたちがやったことへの結果だ。むしろ、彼女が時間を遅れて教えてくれたから現場にわたしたちも居合わせることができたと思えば、きっと被害という意味では、最小限に留められた可能性もある。
だから、これは彼女が背負うことではない。こうしていつも誰かを優先して考えるコレットは実に神子らしい素晴らしい精神なのかもしれないが、背負い込みすぎないか、少しだけ心配になる。
「マーブルさんって人のためにも、死んでしまった村の人のためにも、世界再生を頑張るよ」
「ありがとうコレット。でもね、これは、わたしたちのしたことだから。あなたに背負ってもらうことじゃなくて、わたしたちが背負うことだよ。……でもありがとう。一緒にいてくれるなら、心強いよ」
ぎゅう、と彼女の手を握って、そう伝える。彼女の優しさは否定したくないけれど、押し付けたいわけじゃないのだ。罰があるから、裁いてもらえるから、罪を受け止めることができる。だから、全部神子に背負わせるのはよくない。
でも、寄り添ってくれることはちゃんと嬉しいって、伝わったかな。たぶん、この言葉が一番、わたしの気持ちに近いと思うんだけど、上手に伝わっているかな。
じっと彼女を見つめていれば、コレットはふんわりと笑って。手を握り返してくれた。
「……うん。ありがとう」
「こちらこそ。さて、もう寝ようか。明日も早いし、ちゃんと休める時に休まないとね」
「うん。そだね。……あ、あのね、ナギサ。お願いしてもいいかな」
「なあに?」
「その……手、繋ぎたいなって……」
もじもじと体を揺らして、照れくさそうにコレットは言う。
可愛い。いじらしい。胸がときめいてしまってすぐに反応出来ないでいると、彼女は勘違いしてしまったのか、慌てて謝ってきた。
「ご、ごめんね。私、友達と一緒の部屋で寝るって初めてだから、やってみたいなあって、思って……」
「そっか。ロイドとジーニアスじゃ一緒には寝られないもんね」
「うん……それに、私、クラスで浮いてたから。ロイドが私のところに来てくれて、初めて友達が出来たの」
それは、コレットが神子だったから、なのだろうな。
彼女がただのドジで天然な女の子だってわかっていても、再生の神子さまを相手に気軽に友達になろう! と言うのは、確かに難しいかもしれない。
「ジーニアスもそうだよ。転校してきた時は浮いてて、でもロイドの宿題を見たのをきっかけに、ロイドが話しかけるようになったの。だから私も仲良くなれたんだよ」
「……ロイドが二人を繋いでくれたんだね」
「うん。だから私もジーニアスも、村で一番ロイドが好きなの」
そう語るコレットは、月明かりしかない夜の中でも幸せそうだ。
そうだね。ロイドが分け隔てなく、誰にでも手を差し伸べてくれる子だって、わたしもちゃんと知っている。神子だから、転校生だから。森で倒れていた謎の人だから。どうしても馴染めないこともある時。そんなこと関係ないって話しかけてきて、手を伸ばしてきて。他の人と同じように、当たり前に笑いかけてくれる。それはとっても、嬉しいことだ。
本当に彼のことが大好きなんだな、と思って、なんだか胸が暖かくなる。
「今はナギサも友達になってくれて凄く嬉しい。大好きだよ」
「あはは、ありがとう」
いじらしいなあ。こんな子に好かれるなんて幸せだぞ、ロイド。
わたしを姉として迎え入れてくれた少年を思い浮かべながら、くすりと笑う。
ベッドは少し離れているけど、互いに手を伸ばせば問題なさそうだ。わたしも自分のベッドに入ると、ほら、と手を伸ばした。
「ほら。じゃあ手、伸ばして」
「うん! ……えへへ。ありがと」
「大好きって言われちゃったらねえ。私も同じ気持ちだからこれくらい構わないよ」
どうしても腕は布団から出てしまうので肌寒いけれど、ぎゅ、と繋いだ手は暖かい。
優しいぬくもりを分け合いながら、わたしたちはゆっくりと眠りに落ちていった。