「お帰りなさい。だいぶ落ち着いたみたいだね」
遺跡を出て、近くに野営をはって、夜もふけてきた頃。
そろそろ寝ずの番をするクラトスさん以外は眠りだした頃に、少し夜風に当たってくると言ったコレットが戻ってきた。
だいぶ落ち着いたらしく、まだ少し元気はなさそうだが顔色はよくなってる。彼女が浮かべた笑顔も、もう倒れたときのようなぎこちなさはない。
「うん。ごめんね、心配かけちゃって。もうだいじょぶだよ」
「いいよ。無理しないで、明日までゆっくり休もう」
明日からは海岸線に出て、海の向こうのパルマコスタという町に行かねばならない。
シルヴァラント最大の都の呼ばれるそこに行く方法は、もちろん船旅だ。
だがこのご時世に船を出してくれる場所なんて少ない。最悪、歩いて行かねばならないのだ。今の内にゆっくり休むべきである。
コレットはそれに頷くと、敷いてあった布の上にもう一度横たわろうとして……ふと、思い付いたようにそれをわたしのすぐ近くまで引きずってきた。それからわたしの膝に頭を乗せるように横たわる。
「ナギサのお膝、なんだか安心するね」
「そう? なんか、前にも同じこと言われたけど……」
「それってミトスくん?」
「ううん。そのお姉さん」
甘えるように擦りよってきたコレットの頭を撫でながら答える。先ほど具合が悪そうにしていた彼女にしてやれることなんてほとんどなかったし、膝を貸すくらいなんでもない。
それに、マーテルさんもよく、同じように膝に頭を乗せていた。わたしの膝は落ち着くと言っていたことを思い出して自然と頬を緩める。そんなにいいのかな、わたしの膝。自分の膝なので試せないけど、褒めてもらえるなら細かいことはいいや。
なんとなく彼らと似た雰囲気のあるコレットに、あの頃みたいに膝を貸すのは不思議な感じで、わたしはふふ、と笑みを零した。
「そっか。三人で旅をしていたんだよね」
「そうだよ。半年にも満たなかったけど……」
「その時があるから、今のナギサがいるんだよね。二人に感謝しないと」
「感謝?」
「ナギサに出会わせてくれてありがとうって」
確かに、ミトスくんたちがいなかったら、わたしは早々にこの世界でリタイアしていただろうし、こうして旅についていけるほどの力も持てなかっただろうから、今のわたしがあるのは全部あの二人のおかげだ。
あの頃とはいろんなことが変わって、一緒に旅する人も違って。楽しいけれど寂しくて、寂しいけれどとっても楽しい。
二人にもみんなを紹介したかったな、なんて、思うくらい。
「……わたしも、みんなに感謝しないとな。ミトスくんたちに会えたことも、コレットたちに会えたことも嬉しいから。これからも、みんなと一緒にいたいって思う。そうだなあ、旅が終わった後、再生された世界をみんなで見て回るのもいいかもね」
「楽しそうだねえ」
「他人事みたいに言わないでよ。当然コレットも一緒なんだから」
むしろ頑張って再生された世界を、再生させた本人が見ないでどうするんだ。
ぷに、と頬を突きながらそう言えば、彼女はじっとわたしを見上げた。
「……私、天使になっちゃうよ?」
「天使だろうがなんだろうが、コレットであることに変わりないよ。ロイドもさっきそう言ってたでしょ。そもそもとっくに天使みたいに可愛いから、変わらないよ」
「そっか……そっかぁ。えへへ」
ふふふ、とコレットがわたしの膝にしがみついてくる。
それが可愛くて、わたしも笑った。
「私、ナギサが好きだよ。天使になっても、ずっと大好きだから」
「わたしもコレットが大好きだよ」
「うん……ありがと」
ずっとずっと変わらない。
天使になっても、ずっと。
変わらないよ。