27-3

「閉鎖されてはいるけど、坑道としてはまだしっかりしているのね。採り尽くしたわけでもなさそうだし……採掘できなくなった理由があるのかもしれないわ」
「ディザイアンでしょうか」
「おそらくね」

中の坑道は、決して中が崩れている、なんてことはなかった。魔物がさまよってはいるけれど、それでも大した数ではないだろう。たぶん、まだ採掘作業をしようと思えばできる程度だ。
それでもこの坑道が封鎖されていた理由が、コレットや先生の言うとおりディザイアンが原因なのだとしたら。細工師一族として、鉱石も扱うドワーフの生きる場所までも追われたということになる。
ロイドがさっと俯くのを見て、この世界でダイクおじさん以外のドワーフに会うことは、きっとないのだろうと思った。

探検、とは言うけれど、当然、中に宝物があるわけではない。むしろ何もないね、と確認するだけの道だ。意味があるのかとは思うけれど、コレットも興味があるようだったし、今後こういう場所があっても何もなかったでしょ、と諭しやすいので、決して無駄な道ではない。
だが、奥の行き止まりまで来たところで、ぞわりと肌が粟立った。
何か得体の知れない恐怖が込み上げてくるのを感じて思わず立ち止まってしまったのはわたしだけじゃない。全員が緊張した様子で辺りをうかがっていれば、そこに転がっていた巨大な骸骨がゆっくりと立ち上がった。
……いや、骸骨、なんて、ここまでの道にはなかったのに。どうしてこんなところに、と動揺していれば、その骸骨は己の周りに突き刺さっていたいくつもの剣を抜いて、こちらへと剣を向けてくる。

「なんだ、こいつ?」
「危ない!」

ボソボソと低く何かを呟いているようだが、よく聞こえない。それでも四本の剣を振り下ろしてくるのだけは間違いないから、わたしたちはそれぞれに衝撃に備えた。
重い。先ほど戦った式神の攻撃なんて比じゃないくらい、すべての一撃が重い。ガードしてるはずなのに一気に体力を削られるのがわかった。

「く、うう……っ!」
「な、なな、なに!?」
「くるぞ!」

見上げるほど大きなそれに、ロイドは地を蹴って回転しながら切りかかる。
大きいから当たりやすいが、やはり体力も人一倍あるらしい。倒れるどころかなかなか体勢を崩してもくれないそれに、わたしたちはとにかく攻撃を繰り返す。

「裂空斬!」
「エアスラスト!」
「よっと、てい! 恐風陣!」
「聖なる翼よ……ここに集いて神の御心を示さん。エンジェルフェザー!」

コレットの天使術が貫いた瞬間、骸骨がそれまでと違って呻き声をあげた。
光が弱点なんだ。すぐにコレットと目配せをしてうなずき合う。
ロイドたちがそれぞれで術技を繰り出して隙を作ってくれるのを、わたしたちは見逃さない。

「よーし、ナギサ!」
「任せて、コレット!」
「輝け、極光!」
「フィブリル!」

コレットの天使術を、わたしが吹き上げた風に巻き込んで叩きつける。回転の力も加わった光が幾度も骸骨の体を貫けば、やがて彼はボロボロと崩れて消えた。

「た、倒せたのか……?」
「そう……みたい」

はあっと大きく息を吐き出す。
良かった、ちゃんと勝てて……最悪途中で逃げることも考えていたけれど、さすがに全員で戦えばなんとかなったみたいで、ほっとした。

「大きかったねえ。きっと骸骨さんになる前は、大きなお家に住んでたんだろうね」
「あんな人間いないだろ、角生えてたし……」
「魔界の実力者の成れの果てかもしれないわね」
「魔界? 言い伝えじゃないの?」
「そうとも言い切れないわ。立証されていないだけで、存在している可能性はあるもの」

骸骨の正体について推測を始めた彼らに、わたしはぼんやりと骸骨が崩れ落ちた場所を眺めてみる。
特別、他に何か落ちている様子はない。あの骸骨の他に骨らしきものも落ちていないようだし、ここで事故や事件があった……というわけではないだろう。本当に魔界とやらの生き物だったりして。わたしも別の世界から来たわけだし、魔界があると言われても納得だ。
それにしても、あの暗殺者は彼に遭遇しなかったのだろうか。落とし穴に落ちてしまったのは災難だけれど、運がまったくないわけではないらしい。

「どうした?」
「ん? ああいや、あの暗殺者、この道を通ったはずだよね? よく無事に追いついてこれたなあと」
「確かに」
「どんな探検だったか、お友達になったら聞いてみようね」

にっこりと笑うコレットに、もはやなんと言えば良いのやら。
思わずロイドもため息をついた。

「のんきだなぁ……だいたい、どうやって友達になるんだよ」
「あ……どうしよう」
「どうしようって……」
「今度会う時までに、考えておいてね」
「俺が考えるのか……?」

まあ、何はともあれ。
わたしたちはこれから、パルマコスタを目指して船に乗らなければならないのだ。
船が出てるといいなあとか、沈没せずにたどりつけたらいいなあと願いながら、わたしたちは今度こそオサ山道を後にした。