32-2

「エルフの血を捨てられねえ愚か者共々……神子を葬り去ってやる。生きて帰れると思うなよぉ!」

さんざん笑っていたマグニスは椅子から降りると、それまでの嘲笑を引っ込めて、斧を振り回しながらそう吼えた。
炎を纏った斧は見た目通り重く、とっさに受け止めたクラトスさんが顔をしかめる。

「くそ! 虎牙破斬!」
「おらあ! 爆炎斧!」
「潰れちゃえ! グレイブ!」

地中から突き上げた岩にマグニスの体が浮く。だがさすがに戦い慣れをしているのだろう。彼は落ちるときの勢いを使って斧を振り下ろすと、そのまま素早く魔術を唱えた。
視線の先はジーニアスだ。わたしはそれに気付いて彼を自分に引き寄せると、そのまま帯を大きく広げて、自分たちを包み込む。
火の封印でクラトスさんに教わった魔術障壁だ。仕組みは感覚でしかわかっていないのだけど、エルフの里で織られたこの帯なら、エクスフィアがなくてもある程度魔術による攻撃を防げるらしい。

「おらおら、逃げてみろ! イラプション!」
「防護陣!」
「ありがとうナギサ、アクアエーッジ!」
「ぐうっ!」

無事に成功した魔術障壁の隙間から、ジーニアスが放った水の魔術がマグニスの体を切りつける。
体制を崩した彼に、ロイドたちがたたみかけるように剣を振るった。

「やああっ! 剛・魔神剣!」
「魔神剣・双牙!」
「舐めるなよ、豚どもが!」
「行くよクラトス!」
「遅れるな!」
「ロックマウンテン!」

クラトスさんとジーニアスの地系複合魔術がマグニスに降り注ぐ。
いくつもの岩が彼の体を強く叩きつけて、やがて立っていられなくなった彼は近くの装置に寄りかかって膝をついた。

「くそっ……この優良種たる俺様が、何故……」
「それはお前が愚かだからだ、マグニス。クルシスはコレットを神子として認めている」
「そうだ! コレットは世界を再生するんだ。お前らなんかに負けるかよ!」
「そうか、お前が……俺様は、騙されたのか……」

意味深な言葉を呟くと、マグニスはもう耐えられないと床に倒れた。
もう彼は動けないと判断したのだろう。リフィルさんは急いで壁の操作パネルに近付くと、急いで何かを打ち込み始めた。
ふと、目をやったモニターにショコラが映る。ディザイアンに鞭打たれながら歩く彼女は唇を強く噛み締めていて、そのまま牧場を出て行ってしまった。

「ショコラさん……」

他の牧場にでも連れて行かれるのだろうか。許してもらえなくても、せめて話をしたかった。……彼女は、聞いてはくれないだろうけれど。ただの自己満足だとしても、せめて。マーブルさんは最後まで優しい人だったって、伝えたかった。
閉じ込められていた人々の扉を開いて、これで大丈夫だとリフィルさんが息を吐く。残る問題は取り外すだけでも危険なエクスフィアだが、それはダイクおじさんに手紙を書いてどうにかしてもらうことにした。

「これ以上の詳しい話は後よ。今から10分後にここを爆破させます」
「マジかよ!」
「思い切ったね!」
「姉さん! そんなことしたら……」
「少なくとも、この辺りのディザイアンの勢力は減退するでしょうね。叩くなら徹底的にやるべきです」

ていうか自爆装置って本当にあるんだね。
戦隊ものとか見ていつも思うけど、作った人は何を思って自爆装置を付けるんだろう。いや、ちょっと、爆発を背に逃げるのは憧れていたけれど、こんな叶え方をすることになるとは思わなかった。
ちゃんと逃げ切れるかな、とわたしたちはそわそわと落ち着かないけれど、ジーニアスも不安が強いのだろう、姉を見上げる弟の肩を、彼女は強く抱き寄せる。

「姉さん……」
「忘れないでジーニアス。私たちと彼らは違う……違うのよ」

そう言って、リフィルさんは躊躇することなくボタンを押した。