37-1

「四つ目の封印の最有力候補がマナの守護塔、ってところなんだよね。再生の書に書かれていたのがすべてなら、これが最後になるけど……」

アスカードより北の方角にある、ルインという町を目指して歩きながらそう問いかける。
現在の目的地はそのマナの守護塔。そこを管理している教会に協力を頼むことと、一時の休息を求めて、まずはルインへ向かっているわけだけれど。一応、再生の書に記載されていない封印がある可能性も考えて、地図を広げては睨みつける。
一応、東西南北とシルヴァラントのほぼ全ての地域を回ったことになるし、古い伝承が残るような場所や遺跡もあらかた回ったはずだけど……どうだろう。この四つ目の封印で最後、というのもわかりやすくていいのだけれど。

「そうね。でも塔に怪物が出るようになってからは鍵がかかって入れないの」
「それがルインにあるんですよね」
「ええ。ルインの教会の祭司が管理しているはずです」
「ルインか……どんな町なんだ?」
「……美しい町だ」

ロイドの呟きに答えたのはクラトスさんだった。
いつも無愛想な彼にしては珍しく、穏やかな表情でルインについて話し出す。

「希望の町と言われ、人々は活気に満ち溢れている。良いところだ」
「ふーん……あんた行ったことあるのか?」
「……知り合いの故郷でな」
「あ、見えてきた!」

ジーニアスが歓声を上げるのを聞いて、わたしも自然と早足になる。あのクラトスさんも頬を緩めて語るような町だ。きっと素敵な場所なのだろう。
だが本当に町に近付いて、その全景が見えるようになって……わたしたちは思わず、立ち止まってしまった。

そこに、町、と呼べるものは、もうなかった。
家という家が叩き壊され、燃やされ、橋もすべて、跡形もなく壊れてしまった残骸が、そこに転がっている。黒くなった建物に火の気配はない。けれど木造のそれは腐ってはいないようだから、数日のうちに破壊された、ということなのだろう。誰かが暴れまわった後のように、ただ静かに、崩壊した景色に、ぎゅうと咄嗟に胸元を握りしめる。
希望の町と言われたそこは、何もない。誰もいない。
今にも死んでしまいそうな……絶望の町に変わり果てていた。

「なんだよ、これ……」
「こんな……これじゃまるで……」

イセリアみたい、と呟きそうになって口を閉ざす。
はっきりと言葉にしなくても、これがディザイアンの仕業だろうことは、わかっていた。
いったいこの町の何が彼らの逆鱗に触れたのかはわからないが、この町は彼らに攻め込まれて、そして……誰にも。誰も助ける手を差し伸べることができないまま、壊れて、なくなってしまったのだろう。

「……妙だわ」
「先生?」
「これだけ町が破壊されているのに、人の影はおろか死体一つない……」
「そういえば……」

言われてみれば、確かに家が破壊されて転がっているだけで、人がいる気配はない。隠れている人もいないようだし、死体もどこにもない。
イセリアの時は避難した人があちこちにいたし、死体だって……あったのに。
でもここには何もない。誰もいない。そのことに妙に胸がざわついた。

「とにかくここでこうしていても仕方ないわ。教会へ行って鍵がないか探してみましょう」
「向こうには噴水のある広場がある。そこに誰かいるかもしれん……」