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まさかいきなり戦闘になると思わなかったので焦ったけれど、コレットをと抱っこしていたコリンちゃんをクラトスさんに任せて後ろに下がらせて、しいな、ロイド、ジーニアス、わたし、リフィルさんが前に飛び出した。
ウンディーネは水の剣を構えて、勢い良くわたしたちに切りかかってくる。前にこの場所にいた封印の守護者なんかより、ずっと早い。大きく後ろに下がって避けるけれど、次の瞬間には魔術による水柱が追撃してきた。

「スプレット!」
「うわっ詠唱早い!」
「気を付けなさい。アグリゲットシャープ!」

リフィルさんの補助術を受けて、それぞれの武器が淡く光る。
攻撃力の上がったそれで、ウンディーネに飛びかかった。

「炸力符!」
「やあっ! 虎牙連斬!」
「この程度ですか? ……アクアエッジ!」

早い。とにかく詠唱が早い。さすが水の精霊だ。中級も初級も関係なく、ジーニアスより早く発動してくる。でも、数ではこちらが有利だ。いくら詠唱が速かろうと、その隙を与えずに攻撃を繰り出せば必ず倒せる。
ちらりと、二軍としてこちらを見守るコレットを見た。心配そうに見守っている彼女とクララさんを助けるためにも……絶対、負けられない!

「ライトニング!」
「大丈夫? ファーストエイド!」
「行くよ! 流転輪廻!」
「やっ! はあ! 生吸符!」

目の前に竜巻を起こすつもりで、帯を勢い良く引っ張る。エクスフィアがなくたって、この大切な武器があれば、地面を抉るのも、風を起こすのもできる。ちゃんと、強く、戦える!
ジーニアスの雷で動きを止めていた彼女に直撃して、ぐらりと体を傾かせた彼女に、今がチャンスと一気に距離を詰めた。

「円月!」
「裂空斬!」

ウンディーネを宙に浮かして、そこへロイドが回転しながら切りかかる。
空中で何回も切られた彼女は次の行動に移れない。

「しいな!」
「任せときな!」
「輝け! 大いなる蒼我よ!」
「蒼我古刻翼!」

鳥の翼のように広がり、ウンディーネを囲んだしいなの札ごと、勢いよく突っ込んでいく。その翼は一気にウンディーネを貫いて、彼女の形を崩した。……崩しすぎた。まるで水に戻ってしまったかのように床に広がる精霊に、もしかしてやりすぎたかもと冷や汗が出る。
だが、次の瞬間には再び祭壇の上に何事もなかったように現れて、彼女は穏やかに微笑んだ。

「……見事です。では、誓いを立てなさい。私との契約に何を誓うのです」
「今、この瞬間にも苦しんでる人がいる。その人たちを救うことを誓う」
「わかりました。私の力を契約者しいなに……」

すうっと姿が空気に溶けて、彼女がもっていた札に吸い込まれていく。
最後に残ったのは青く染まった札と、アクアマリンの指輪だった。
精霊と無事に契約したのだ。それに実感して、胸の奥からぐっと何かが込み上げてきて思わずわあっと声を上げて彼女に駆け寄った。

「やったね! しいな!」
「すごいね〜!」
「て、照れるじゃないか」
「いや、本当にすげぇ! あ〜、早くウンディーネを喚ぶとこを見てえなあ!」

わいわいと彼女を囲めば、しいなも照れくさそうに笑う。
心底ほっとしたような笑顔にわたしたちまで安心してしまって、頑張ったね、と思わず抱き着いてぐしゃぐしゃと頭を撫でた。当然怒られたけれど、今くらいいいだろう。
これでユニコーンのところへ行ける。コレットたちを助けられるかもしれないんだ。今は喜ぼう。

「……クラトス。あなたやけにいろいろ詳しいのね」
「精霊については少々詳しい知り合いがいた。それだけだ」
「二人とも、早くユウマシ湖に行きましょう」
「……ええ、そうね」