祭壇の上、レミエルの隣に浮かんだコレットの背中で一際大きく羽が煌めく。
最後まで、レミエルのような翼にはならなかったな、なんてぼんやり思って、視界がぼやける理由を必死に忘れようとするけれど。
静まり返った空間を裂いたのは、天使の高笑いだった。
「ふはははは! どうだ! とうとう完成したぞ! これで私が、四大天使の空位に収まるのだ!」
高笑い。高笑い。
あの柔和な天使の表情はどこにもない。
そのことに、腹の底から何かが込み上げてくるのを感じた。
怒りかもしれない。
悔しさかもしれない。
ただ、コレットが頑張ってきたこと、コレットが選んだこと。それに対する感情は何もなく、ただ自分のために笑い声をあげる天使に、コレットを任せる気にはなれなかった。
「待ちな! コレットをどうするつもりだ!」
「天に導くつもりなのよ」
「……許さねえ。何がクルシスだ、何が天使だ! 何が女神マーテルだ! コレットを返せ!」
「そうはいかぬ。この娘は長い時間をかけてようやく完成した、マーテルさまの新たな器なのだから。貴様たちにもう用はない……消えろ!」
飛びかかろうとしたロイドを突き飛ばして、レミエルが翼を広げる。
完全に戦う姿勢だ。天使に逆らうなんて、と思う気持ちがまったくなかったわけではないが、相手が攻撃してくるのならば仕方がない。コレットがもう天使になってしまったとしても、このまま天に連れていくなんて、認められない。全員がそれぞれ武器を構えて散らばる。
「ホーリーランス!」
「フォースフィールド!」
「冗談じゃないよ。コレットを元に戻しとくれ!」
「やああっ旋幻舞! 岩砕陣!」
光の槍をくぐり抜けて、レミエルのもとに走る。ああ、こんな時に、クラトスさんはどこへ行ってしまったんだ。でもこの場にいない人を頼るわけにはいかない。
遠慮はいらないと帯をしならせて、勢い良く叩き込む。エクスフィアの無いわたしでは大したダメージにならないけど、詠唱の時間稼ぎも邪魔も出来る……出来るんだ!
「コレットは……コレットは……! っ燃えちゃえ! フレイムランス!」
ジーニアスの放つ炎が落ちる。
さすがの天使も吹き飛ばされ、羽根が辺りに飛び散った。
「ぐう……っジャッチメント・レイ!」
「うああっ!」
カウンターのように繰り出された光をまともに浴びて、ぐらりと視界が傾く。純粋な光は眩しいなんてレベルじゃなく、痛い。
思わず倒れてしまいそうになるのを必死に堪えて、わたしは再び構える。
「ナギサ! あなたは下がりなさい!」
「そんなこと、言ってる場合!?」
「……っ今、助けます! ナース!」
リフィルさんの声を振り切って走る。
全員を回復してくれるが、わたしには効果が薄い……当然だ。
わたしはエクスフィアもない、ただの弱い人間だもの。
世界と友達を天秤にかけて、結局どちらかだけを選ぶことは出来ないと喚く、欲張りで無謀な人間だもの。
それでも、やっぱり両方助けたいんだ。
「ロイドぉっ!」
「うおおおおーっ!!」
「貫け、絶氷の剣ぃっ!」
「セルシウスキャリバー!」
ロイドとわたしの複合特技が、鋭い風から冷気を纏った剣になる。
それは、勢い良く天使の体を貫いた。
「馬鹿な……最強の戦士である天使が、こんな人間共に……」