「三人とも! 無事だったか!」
コレットの耳を頼りにみんなと合流すれば、追いかけてきた飛龍はとっくに倒れていた。さすがに手負いの一匹相手に手間取るようなみんなじゃない。どうやら他に怪我人はいなさそうで安心する。
駆け寄ってきたロイドがほっと表情を綻ばせるのを見て、わたしもなんとか笑顔を返した。
「ごめんね、心配かけて……すごく瘦せ我慢をしているので回復してもらえると助かります!」
「当然です!」
叱りながらも駆けつけてくれたリフィルさんの治癒術を受けて、ほっと息を吐く。
先ほどもミトスに応急処置として治癒術をかけてもらったからわかるけれど、やっぱりリフィルさんの治癒術はすごい。ユニコーンの角と守護塔で得た知識とか、これまでの経験値とか。いろんなものが積み重なった結果なんだろうけれど、どんどん痛みが引いていくのがわかる。
なんて、比べるような言い方をしてしまったけれど、ミトスが治療してくれなかったら、今どうなっていたのかわからないわけで。未熟でもなんでも、わたしのために治癒術を使ってくれて助かったな。あとで、もう一度ちゃんとお礼を言わなくちゃ。
「傷は塞ぐことができるけれど、血は戻らないわ。パルマコスタに戻るまでの間、戦闘は控えるように」
「はい、申し訳ございません」
「もう……お願いだから、あまり心配をかけないでよね」
「あんたのレアバードの方はもうだめだね。レアバードだけで済んでよかったけどさ」
「まったくだ。落ちていくのを見た時には肝が冷えた」
「ミトスさんを守るのは立派ですが……ご自分のこともちゃんと考えてください」
「まったく何も言い返せません……」
次々にお小言をもらって、うーん、と首を傾げる。
おかしいな、自分を犠牲に、という意味では前科がある人は他にもいるはずなんだけど。無茶をする、という意味では、ここにいる全員がすでに経験済みだと思うんだけど、なんでわたしだけこんなに言われているんだろう。
まあ、みんな怪我はしなかったし、無茶をしたなりに結果は出していたし。庇った相手と一緒に落ちて怪我をして心配かけるだけのわたしとは違う、と言われたら、それまでだけど。
ここでわたしが怒られることで、他のみんなにも無理をし過ぎないようにと注意喚起ができると思おう。あと、やっぱり大怪我、痛いし。あの戦争の時とか、救いの塔とか、結構これまでも大怪我はしたし、何度も生死の境をさまよったけれど、慣れるものでもない。これからはもう少し考えて……考えて行動しなくちゃって反省して、実行できたのってそのうちの何個くらいかな。ううん、今は考えるの、やめておこう。
「ミトスを守ろうとしたのは立派だけど……だからって、ナギサちゃんが怪我したら、俺さまたちみ〜んな泣くからな」
「それはまたすごい脅し文句だね」
「でも事実だぜ。……俺はもう、何かのために自分を犠牲にする奴なんて、見たくねえよ」
ゼロスくんの言葉にうなずきながら、つらそうに視線をそらしたロイドに、ああ、またタイミングが悪かったなと、反省することが増える。
彼が今思い出しているのは、ボータのことだろう。自分たちの命と引き換えに、わたしたちを逃がしてくれた人。
ロイドはずっと、誰かを犠牲にしなくていい世界を造ろうとしているのに。ついさっき、誰かを犠牲に生きながらえたばかりだ。
「……心配かけてごめんね。心配してくれてありがとう」
理想を追うのは、難しい。
それがどんなものであれ、素直に実現なんてしない。それでもわたしたちはいつだって、誰かを傷付けて、その痛みを背負いながらひた走ることしかできない。
ジーニアスに付き添われながらも、ずっと泣きそうな顔でこちらを見るミトスの視線を感じながら、わたしはやっぱり、まだまだ、全然思い描いたものになれないなと、こっそりと息を吐いた。