78-2

ようやく戻ってきたアルテスタさんの家は、なんだか久しぶりな感じがした。
テセアラからシルヴァラントに渡った時も思ったけれど、二つの世界はとても似ているようでまったく違うから、ほんの少し離れただけでも懐かしく感じる。

「じゃあ、ミトス。アルテスタさんと仲良くな」
「遊びにきてくれるよ?」
「もちろん」
「近くに来たら休みに来るよ」
「元気でな」

寂しそうにわたしたちを見送ろうとしてくれるミトスに少し胸が痛むけれど、彼を連れて戦うわけにもいかない。
でも絶対にまた来るよ、と指切りをすれば、彼も踏ん切りがついたようだ。うん、と頬を緩めてわたしたちから離れた後、みんなの顔を見てから、プレセアちゃんへと視線を止めた。

「プレセアの妹の仇が見つかるように祈ってるよ」
「……ありがとう」
「プレセアの妹の仇? それはいったいどういうことだ?」
「そうか。リーガルには話してなかったな」

ぎこちなく笑うプレセアちゃんを見て、首を傾げたのはリーガルさんだ。
そういえば、アリシアさんのことを聞いたのってアルタミラでのことだから、その場にリーガルさんはいなかったんだっけ。
そうしたら知らなくて当然だよね、と事情を話そうとすると、なぜかゼロスくんが慌てた様子でそれを遮った。

「あー! あ、でもよ、そんな話をここでほじくり返さなくても……」
「何言ってんだよ! プレセアの妹は殺されたんだよ!」
「殺された?」
「はい。プレセアの妹さんはブライアンさんって貴族に仕えていたそうなんです。でもそのご主人様に……」

話を聞いていたリーガルさんの表情が驚愕に変わる。
そりゃそうだろう。仕えていた相手に殺された、と聞いたら、誰だってそんな顔をする。

「ひどい奴さ! まだ年端もいかない子供を……殺すなんて!」
「妹……だと? そんな馬鹿な! プレセア。お前の妹の名は?」
「……アリシア……です」

その名前を聞いて、彼は信じられないとばかりに目を見開いたあと、悲しそうに表情をゆがめた。けれど、それはほんの少しの間だけだ。彼はすぐに表情を押し込めるようにうつむくと、「……そうか」とだけ呟いて、ぐっと何もかもを堪えるように奥歯を噛んだ。
その様子は共感とか憐れみというより、何かを強く後悔しているように見えて、わたしたちは首を傾げる。もしかして、リーガルさんはこの件に関して、何か知っているのだろうか。だから、ゼロスくんがあんな反応をしたのだろうか。

「リーガルさん……?」
「何か知ってるのか?」
「その殺人鬼に、心当たりがある」

その発言に、今度はプレセアちゃんが驚きの声を上げる。
リーガルさんはただ静かに彼女を見て、こくりとうなずいた。

「……本当ですか!」
「……私をアルタミラへ連れていってくれ」
「私からもお願いします。……ごめんなさい。わがままを言って」
「いいや。大事なことだろ。行こうぜ、アルタミラに」

ロイドの言葉に、わたしたちもうなずく。
だって大切な家族のことだ。大事に決まっている。それに、彼女の墓石にあるエクスフィアのことだって気になるし、反対する人なんていない。
まずはアルタミラへ行こう、と歩き出したわたしたちに、ミトスがそっと手を振った。

「みんな、気を付けてね。いってらっしゃい」