レザレノ・カンパニー本社に訪れた時、警備員の人が倒れているのを見て、わたしたちよりも先に駆け寄ったのはリーガルさんだ。
器用に抱き起した警備員に特に怪我はない。ただ、意識は朦朧としているようで、エクスフィアブローカーのヴァーリが、とだけ伝えて気絶してしまった。詳しくはわからないけれど、以前も鉱山で見たことのあるヴァーリが、ここで暴れたのだろう。
彼をきちんと横たえてから空中庭園に向かうと、ちょうどアリシアちゃんの墓の前で、ジョルジュさんにつかみかかるヴァーリの姿が見えた。
「答えろ! トイズバレー鉱山の奥へ続くロックは何がキーワードになってるんだ!」
「……知らぬ」
「てめえ……!」
「……私が教えてやる」
鼻息荒く拳を握ったヴァーリを止めたのは、リーガルさんの声だ。
ゆっくりと近付いてくる彼を見て、ヴァーリは歪に頬を吊り上げ、ジョルジュさんは驚きに声を張り上げた。
「リーガルさま! 何故こちらに!」
「……ちょうどいい。会長みずからお出ましか」
「会長……?」
「私の声紋と網膜で開く。無理にこじ開ければエクスフィア鉱山部分は崩落するだろう」
「そうか。ならばリーガル! 俺たちに協力して扉を開けろ! エクスフィアが採掘できなけりゃ、こちとら商売あがったりだ」
「断る。それにロディルは死んだ。お前のおろすエクスフィアを大量に買い取る者はもういないのだ」
「バカが! ロディルさまが死んでも、俺には教皇さまという後ろ盾がある。エクスフィアの買い手ならいくらでもいるんだよ!」
「黙りなさい。罪のない人を殺したあなたを許すわけにはいきません」
戸惑うわたしたちをよそに、会話は進んでいく。
プレセアちゃんの怒りを滲ませた声だって、ヴァーリには少しも響かない。
だが、それでもこのままの状況では分が悪いとわかっているのだろう。唇を吊り上げながらも後ずさる彼の後ろで、ぼふんという音が聞こえた。
一緒に辺りに立ち込めた煙には見覚えがある。ミズホの民が使うそれだ。視線を上げると、そこにいるのは想像した通り。以前、異界の扉でわたしたちを追い詰めたくちなわさんだ。
「くちなわ! あんた、この男の仲間だったのかい!」
「いずれ国王は死に、教皇さまの栄華となる。その時はレザレノ・カンパニーなど握りつぶしてやる!」
ジョルジュさんを突き飛ばしたヴァーリは、そのままくちなわさんと共に姿を消す。
あっという間の出来事で、一気にいろんな情報が溢れ出した時間だったけれど、その煙が消える頃には、辺りは静かになっていた。