「なるほど。それなら、ブルーキャンドルがお役に立つでしょう」
精霊研究所で事情を話せば、あっさりと解決法を提示された。
なんでも、そのブルーキャンドルというのは「闇の力を打ち消す聖なるろうそく」と呼ばれており、その力を使えば闇の神殿を覆う闇の中も問題なく進めるだろう、とのことだ。ブルーキャンドル自体も、古文書を頼りに複製に成功しているらしい。さすが、精霊関係を専門に研究している機関である。
「じゃあ、悪いんだけど、それを一つ貸してくれないか」
「それはもちろん……」
「おい! こいつらのせいでケイトが捕まったんだぞ! そんな奴らの力になるのか!」
いいですよ、と答えようとしてくれた研究員の言葉を遮って、横から怒声が聞こえてくる。
怒りに満ちた表情を向けているのは、同じく研究員の男性だ。彼はこいつらのせいで、とわたしたちを指さしている。
「しかし、しいなの仲間なんだ」
「ケイト? ケイトがどうしたんだ?」
ケイトさんは確か、サイバックの研究所にいたハーフエルフの女性だ。プレセアちゃんの研究を行っていた人。以前、捕まったわたしたちを逃がしてくれた人でもある。
どうして彼女の話が出てきたのだろう。いや、そもそも今、彼はなんといった? 彼女が捕まったって、どういうことだろう。
疑問に思うわたしたちに、ブルーキャンドルを貸そうとしてくれていた方の研究員が、困ったように説明してくれた。
「ケイトが罪人をかくまって逃がした罪で処刑されるそうなんです」
「俺たちのせいか……くそっ!」
「ロイド! ケイトさんを助けてあげようよ」
「ロイドさん……私……私も助けてあげたいと……思います」
彼女に対して一番複雑な気持ちを抱いているだろうに。すぐに訴え出たプレセアちゃんに、ロイドは当然だとうなずいた。
「そうだな。でもどうやって……」
「闘技場で行われている試合に出てはどうだ」
「闘技場〜? どうしてまた!」
「あれは元々、罪人と猛獣の戦いを観賞するために作られた施設だ。罪人を闘技場へ連行するため、監獄につながっている」
「……そういやあんたも檻の中にいたんだっけな」
少し気まずそうにリーガルさんは視線をそらしたけれど、とてもありがたい情報だ。
闘技場に参加して、おそらく控室から行けるだろう牢屋に入る。うん、闘技場の方は別に勝ち進む必要はないし、途中で棄権する形になったって、問題ないだろう。
これなら無理なく牢屋へ行けそうだとうなずいていれば、ケイトさんを心配していた男が、ぐっとこぶしを握った。
「本当にケイトを助けてくれるのなら、俺が責任をもってブルーキャンドルを用意してやる」
「よし、わかった。みんな、闘技場へ行こう」
迷いなく言葉を受け入れてから、さっそく闘技場へ向かおうと外に出る。
……けど、ちょっとだけ、わたしが動くタイミングが悪かった。
「おっと、ごめんね」
歩き出そうとしたところで、資料を運んでいたらしい金髪の男の人とぶつかってしまったのである。
しかもばさばさと床に散らばってしまった。あーあ、とその人は気にしていないような声を零したけれど、普通に問題だ。わたしはみんなにすぐ追いつくよ、と声をかけてから、慌てて資料を拾い集める。
「いえ。こちらこそすみません。こ、これで全部で大丈夫ですか?」
「わ、ありがとう。大丈夫だよ……えっと、君たちはたしか……」
集めた資料を渡せば、彼はじっとわたしを見た後、うん、とひとつだけうなずいて、にっこりと明るい笑顔を見せた。
「これからケイトを助けてくれるんだよね。彼女は同じサイバックの研究員なんだ。だから、よろしくね」
「はい。任せてください」
「頑張って。君たちはすごく勇気のある人だ。きっと大丈夫だよ。なんたって、勇気は夢をかなえる魔法だからね」
きっとなんでもできるよ、と笑うその人は、ずいぶんと素敵な考え方をする人らしい。
勇気は夢を叶える魔法、か。うん。それならきっと、わたしたち、どんな夢も叶えられるよね。