無事に借りることのできたブルーキャンドルのおかげで、闇の神殿を攻略は無事に進んでいた。
誤算だったのは、闇の精霊の状態が他と違って不安定になっていたこと。中途半端に封印が解けかかっているせいか、シャドウは五匹の小さな分体に分裂して、神殿の中に散らばっていたのである。全員回収してから行かないと契約に不備ができちゃうかも……と思って神殿内を駆け回るのは、ちょっと面倒だ。
後をついてくる様子はとても可愛らしかったけれど……彼らを祭壇に連れていくのは、途中の仕掛けも相まって、非常に面倒くさい。しかも魔物も結構いるし。アンデット系の魔物って、見た目がやっぱり不気味で気分も滅入るし。わたし、あまりこの神殿は得意ではないかもしれない。
「よっし、絶好調!」
「大地に還り、眠りたまえ」
「リーガルはいちいち大袈裟だな」
「死者への弔いを怠れば、霊魂となって一生つきまとわれることになるぞ」
「えっ!? どうか安らかにお眠りください……」
でも、さすがというかなんというか。このメンバーのいいところの一つ、あんまり緊張感のない空気のおかげで、そこまで落ち込むこともない。
攻略班として一軍に立っているみんなの楽しそうな掛け合いは、この暗い場所でも調子は変わらないようだ。
「あはは、でもやるじゃないかロイド」
「まあな。しいなもなかなかだったぜ」
「あんたとは息が合うねぇ。これからも頼むよ」
「任せとけって」
「ロイドさんって強いんですね」
「なんだプレセア。いまさら知ったのか? なーんてな」
「ごめんなさい」
「あはは……いや、冗談だったんだけど……」
賑やかな会話は見ているだけでも気分が晴れやかになる。
それはわたしだけではなくて、コレットも同じらしい。にこにこと一軍のみんなを眺めている彼女の横で、ゼロスくんがやれやれと大きく肩をすくめた。
「ロイドくんは元気だねえ」
「真っ暗なとこでも眩しいばかりの光をまとってるよね」
「うん。安心するよね」
「二人ともおもしろい表現するねえ、……ま、確かに、眩しすぎるわな」
こんな暗闇程度じゃびくともしねえや、と目を細める彼は、言葉通り眩しそうに彼らを見つめている。
わたしはそれをじっと見上げてから、ふーん、と頬を緩めた。
「やっぱりロイドのこと大好きじゃん」
「ちょ、ちょっとママ、まだそれ続いてんの?」
「コレットもそう思うよね?」
「うん。ゼロスはロイドのこと、大好きだよね。私も好きだよ」
嬉しそうにうなずくコレットを見て、ゼロスくんはなんとも複雑そうな表情を浮かべる。
彼女にうなずきたいような、うなずきたくないような。認めたくないような、そうそうとふざけて同意したいような。なんとも言えない表情を見せる彼に、わたしとコレットは顔を見合わせた。
「別にそんなに変な顔すること?」
「いや、なんつーか、まあ……」
「大丈夫だよ、ゼロス。みんながロイドのことを好きなように、ロイドもみんなのこと、大好きだよ。ゼロスばっかりが好きなわけじゃないから、心配しなくて平気だよ」
なるほど。つまり、ゼロスくんは自分だけが好きになる状況は好ましくない、ということか。確かに、いつも異性に囲まれている人の方が実は一途で愛に不器用って、よく聞くもんね。一方的に思うより、ちゃんと相思相愛になりたいから、いつも軽い態度を気取っているとか、定番だもんね。
ロイド、誰にでも同じ態度をとるから。一方的に好きなのかもって思っちゃう気持ち、ちょっとわかる。でもコレットの言う通り、本当に誰のことも好きなだけなのだ。
ちょっと引きつった笑顔を浮かべていることは無視して、わたしはゼロスくんの肩をぽんと叩いた。
「ゼロスくん、意外と愛に不器用なタイプなんだ」
「いやいや俺さまほど愛に器用な男はいないでしょーよ」
「はいはい。照れない照れない。おーよしよし……しゃがんで」
「あ、またゼロスの頭を撫でるの? 私も撫でたい!」
「コレットちゃん。俺さま、犬じゃねえのよ?」
「うん。ゼロスはゼロスだよね」
いい子だねえ、と明らかに先日撫でた犬と同じ態度で手を伸ばしてくるコレットに、なんだかんだ言いながら仕方ないと屈んで好きにさせる彼は、ちょっとお兄ちゃんみたいだ。
なんだかその光景が可愛らしくて、わたしは再度、なるほどね、とうなずいた。
「……ロイドが大好きっていうより、コレットとかロイドみたいな光属性に弱い……ってところかな?」
「そんな納得したような顔しないでくれる?」
この後しいなにセクハラはやめな! と突撃されるまで、コレットによるゼロスくんの頭なでなでタイムは続くのであった。