その後、わたしたちは予定通りにシルヴァラントへ移動し、火の精霊、風の精霊との契約を果たした。
マナの楔を抜くたびに起きる地震が、どんどん間隔を空けずに起きるようになったから、ちょっと不安な気持ちになるけれど。契約自体はいたって順調。残る契約は、闇と光の精霊だけだ。
光の精霊はアスカを探さないといけない。そのために、すでに絶滅しているリンカの木が、まだどこかに残っていないかと探さないといけない。一応、以前に小さな木の実を持つノヴァ博士一行からそれらしい話を聞いたことがあった気がするけれど……もうだいぶ前のことなので記憶は怪しい。彼らも今どこを旅しているのかわからないし、仮に木を見つけてもそれが元気な確証もない。
ということで、さまざまな手間がかかることがすでに目に見えている。その手間を考えて一番最後にしよう、と決めていたので、次は闇の精霊……なのだけれど。ここで、テセアラにいたのに素直に闇の神殿に向かわず、シルヴァラントへ向かった理由が引っかかってくる。
闇の神殿は、ものすごく暗いのだ。
さすが闇。一寸先は闇という言葉の通り、何も見えない。とても入って中を探索することなどできる気がしない。
火の精霊の力を借りた火を灯したところで全然だめだ。精霊の力を使うのなら、やっぱり、光の精霊じゃないとこの闇は晴らせないのだろう。
他に何か方法はないかと相談するために精霊研究所へ向かうことにして、もうすっかり通り慣れた下水道を歩いている時だった。
「二つの世界が分断されたら、俺さまたち、もう会えなくなるのかもしれねえな」
ぽつりと、ゼロスくんのつぶやきが静かに広がって、みんなの視線が彼に集まる。
ちょっと驚いたようにその視線を受け止める彼だったけれど、すぐに気を取り直して、分断するってそういうことだろ、と肩をすくめた。
「なんで? レアバードで行き来すればいいじゃん」
「今はマナの流れによってつながっているからレアバードで移動できるけれど、世界が切り離されても同じとは限らないわね」
リフィルさんの説明に、そっか、と今さら納得した。
確かに、今はマナの流れによって、二つの世界は繋がっている。それを分断するために精霊と契約をしているのだから、この先にあるのは、世界の分断だ。それは、マナを搾取しあう関係を終わらせるというだけでなく、二つの世界がお互いに無関係なものに変わるかもしれない。
ユアンだって、二つの世界が救われるのか、一つに戻るのかはわからないと言っていた。ただ、マナの流れを分断させて精霊の檻を壊すことで、大いなる実りを発芽させて、大樹を復活させる……彼が言ったのはそれだけだ。二つの世界が今後、どんな形になるのかは、言われてみれば誰も知らないのだ。
「マナの流れが切り離された瞬間、二つの世界は永遠の別れを迎えることになるやもしれぬのだな」
「そっか……もし、レアバードが最後の契約と同時に動かなくなっちゃったら、ボクたち、どちらかの世界に残らないといけないのかな」
「もともとは同じ世界ではあるけど……マナの楔が抜けるんだもんね。どうなっちゃうんだろう」
「ミズホの民はシルヴァラントへの移住を希望してる。何とかならないのかねえ」
世界が本当に永遠に触れられなくなるのなら、考えないといけないことはたくさんある。
下水道の出口までたどり着いたところで、そうね、とリフィルさんが真剣な表情でうなずいた。
「最後の精霊と契約する前に、切り離したあとの世界について、調べておいた方がいいわね」