テセアラの町をめぐって、最後に訪れたのは、アルテスタさんの家だった。
「おかえり! ナギサ、ジーニアス、リフィルさん! みんな!」
ぱあっと嬉しそうに出迎えてくれたのはミトスとタバサちゃんだ。
二人で家の前の岩場に座って、それを指さしていたようだけれど、わたしたちを見た瞬間にこちらに駆け寄ってくる様子が、なんだか可愛らしい。
いつもは大人しい印象の方が強いからかな。素直に好意を向けられると弱いと言うか、嬉しくなってしまうと言うか。なんだろう。ミトスくんの伝承を読んで、ちょっとすっきりしたのもあるのかな。変にそわそわして、変にはにかんでしまいそうになるのを堪えながら、わたしとジーニアスはひらひらと手を振った。
「二人とも、こんなところで何をしているの?」
「ミトスサんに、雲の種類を習っていまシた」
「雲の形でね、天気とか天災とかわかるんだよ」
「わ、すごい。そんなことよく知ってるね」
「うん! ミトスってば本当にすごいよ!」
「そんなこと……こんなことぐらい、ジーニアスだって知ってるでしょう?」
「ボクは学校に行ってたから。ミトスは独学でしょう? やっぱりすごいよ」
「もう、照れちゃうからやめてよ」
ふんにゃりと恥ずかしそうにはにかむミトスに、ジーニアスも嬉しそうに破顔する。二人とも本当に仲が良くて、勝手に笑顔になっちゃうな。ロイドとジーニアスのやり取りとはまたちょっと違うと言うか。どちらも見守っていたい気持ちになることに変わりはないのに不思議だ。
でも、ミトスに今日はどうしたの、と聞かれて、ジーニアスは一気に表情を曇らせた。
「今日はどうしたの? 一休みしにきたの?」
「あ……」
「いや……実は」
言いにくそうなジーニアスの代わりにロイドが説明をすれば、ミトスの表情もどんどんと曇っていく。
だから今テセアラの町をまわっているんだ、と伝える頃には、彼はもうほとんど泣き出しそうな顔をしていた。
「じゃあ……ボク、もうジーニアスやみんなと会えなくなっちゃうの?」
「いや、まだわからない。その可能性があるから、今みんながどっちに残るか決めてるんだ」
「……いやだよ! せっかく……会えたのに! 世界を繋いだままにしておけないの?」
「そうしたら、シルヴァラントとテセアラはお互いを傷つけあうことになるんだよ」
「……そう……だよね。ごめん……わがまま言って」
彼はうつむいてしまうと、そのまま家の中に入って行ってしまう。すぐにジーニアスが追いかけていったけれど、わたしは少し、ためらってしまった。
だって、彼の願い通りにこの場所に留まるつもりなんてないのに、何を言えばいいのだろう。わたしはミトスのことも大切だって思うけど、ミトスくんの約束を追いかけたい気持ちも強くて。……ミトスとした約束をまた破ってしまうかもしれないって思うと、追いかける資格なんてあるのかなって、思ってしまった。
それでも彼を泣かせておきたくはなくて、少しためらった後に追いかけようとしたけれど、扉をひいた瞬間にちょうど中から出てきたアルテスタさんとぶつかって、そのまま渋みをした。
「おおう、どうした、慌てて。ミトスも真っ青な顔で飛び込んできたし……」
決心が揺らぐ。
一番大事なことは、もう決めているはずなのに。
誰かを泣かせてしまうのは、やっぱり嫌だなって、揺らいだ。