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以前に遠くから見た時に抱いた感想と同じように、ここの遊園地にあるアトラクションは、基本的にわたしの世界のそれと対して変わらないようだった。
唯一の違いと言えば、わたしたちがコーヒーカップと呼んでいるものがティーカップであったくらいだろうか。でも英語圏ではティーカップが普通とか聞くし、ものすごく極端に違うわけでもない。これも会長のこだわりでその名前とデザインになっているだけとのことらしい。
そういえばリーガルさんは紅茶派だったなあと思いつつ。露店のものを食べたり、遊具で遊んだりしながら、遊園地を駆け回る。
次に会った時にでも感想伝えておこう。アトラクションは落ち着いて楽しめるし、フード関係がどれも美味しいし。手を繋いでいるミトスもニコニコと楽しそうだ。
連れてきてよかった、と笑って、それからそういえば、と前から思っていたことを聞いてみた。

「自惚れだったらごめんだけど……ミトスって、わたしのこと、結構好き?」
「へっ?」

ぼふんと、ミトスの顔が一気に赤くなる。
ああよかった。この反応を見るに、完全な自惚れの勘違いではなさそうだ。懐いてもらっていると思っていたけれど、これでそんなことないけど……って態度をされたらちょっと落ち込んでしまうところだったので安心する。
ということで次だ。これが重要。ものすごく気になっていたこと。返答によってはちょっと、うーん、それなりに複雑になってしまいそうなこと。

「え、と、その、」
「一応確認したいんだけど……ママ的な意味? それとも長老? わたしとしては、お姉さんくらいがいいんだけど……」

もじもじと何かを言おうとしたミトスが、続いた質問を聞いて、ぽかん、と口を開く。
数秒。たっぷりと何かを考えた彼は、訝しげに眉をひそめた。

「……どういうこと?」
「みんながさあ、わたしのこと、何かと年寄り扱いするっていうかさあ。……まだ、ゼロスくんのママ呼びはいいの。コレットにもお母様みたいって言われたから。でも、同じ部分をさして、イセリアの小さい子はわたしのことおばあちゃんって呼んでるって聞いて! 実家のような安心感的な意味だろうとはフォローもらったけど、だからっておばあちゃんはなくない? だから、ミトスはどうかなって」

そこまでおばあちゃんじゃないよね? いくら異世界出身、古代生活を送った人間とはいえまだ二十五歳。おばあちゃんみが溢れたりしてないよね?
それとも、小さい子から見ればおばあちゃんなのかな。いやいや、小さい子から見れば二十代以上はみんなおじさんおばさんだとしても、わたし一人だけさしておばあちゃんはないでしょう。だいたいちょっと頭撫でたり甘やかしただけでお母さん認定もおばあちゃん認定もわからない。ロイドはちゃんと姉貴とか姉さんとか呼んでくれるし。

そう、つらつらと言葉を並べて問いかける。自分が思っていた以上に気にしていたのか、一度並べ出すと言葉が止まらない。
それをミトスは最初のうちはぽかんとしながらも聞いていてくれたけれど、途中から何かを我慢するように頬を膨らませて震え出して、ついに堪えきれないとばかりに噴き出した。

「っふ、ははは、違うよ、どれでもないよ。ナギサってば、相変わらず鈍いなあ」

仕方ないなあ、と肩をすくめる彼の仕草は、いつも以上にミトスくんにそっくりだ。
ちょっとどきりとしたけれど、すぐに振り払う。それよりも、今ものすごく笑われていることの方が重要だ。笑ってほしいのは事実だけど、そんな、まるでわたしがものすごーく察しの悪い子みたいな態度は、ちょっと放っておけない。

「ええ? そんなに笑うほどじゃなくない?」
「鈍いよ、ずっと鈍い。もう、ボクが好きだって思ってるのはわかるのに、どうしてそこでそうなるのかなあ」
「なにおう? 結構鋭いほうじゃない?」
「ないない。鋭かったら、ボクがみんなと同じこと言ってるなんて思わないよ」

やれやれ、とわざわざ言葉つきで首を振る彼に、むうと頬を含らませる。まるでわたしの方が小さい子みたいだ。わたしが二十五歳、ミトスが十四歳。一回り近く年が違うのに!
でも、出発する前と比べてずいぶんと元気が出てきたみたいで安心もする。元気になったと言うには、ちょっといつものおとなしい様子がどこかに行ってしまっている気もするけれど、まあいい。
目的は達したわけなので、多少の子供からの子供扱いも受け入れよう。わたしは余裕のある大人なので。でもこの後は彼がちょっと怖気づいていたジェットストリームコースターに乗ろう。仕返しなわけじゃないけど。

この数分後、わたしの知っているジェットコースターに比べて、ちょっと荒すぎるそれに、わたしの方がひいひい言うことになるのだけれど。それもまた、思い出としては最高だ。
のんびりと回れるアトラクションも、ちょっと怖いアトラクションも。おいしいフードも可愛い着ぐるみも。二つの世界も種族もぜーんぶ忘れて満喫するのは、とっても幸せなことだ。

「あはは、楽しいね!」

ずっと繋いだままのミトスの手を引いて笑いかける。
彼はまた、眩しそうに目を細めて。それから、年相応の子供らしく無邪気に笑った。

「……うん!」