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ぱちりと、目を覚ます。
見慣れない天井。薄明るい中に差しこんでくる光は柔らかくて、まだ日が昇り始めた時間なんだなと認識する。やたらと柔らかいベッドは抜け出るのがとても惜しいけれど……もう、起きなくては。決意を固めるための時間はもう終わったのだから。
もぞりと起き上がると、もうミトスも起きていたらしい。体はまだベッドの上だったけれど、窓から見える綺麗な朝焼けを眺めていた彼は、隣のベッドにいるわたしに振り返って、ふわりと表情を緩めた。

「ナギサ」
「……おはよう。早起きだね」
「うん。……ここから見える景色が、綺麗だったから」

そう、柔らかく微笑むミトスに、綺麗だな、と思う。
ミトスの笑顔もそうだけど、彼の背後にある、朝焼けとか。優しい景色がそこにあって、ほうっと息が漏れた。

「わたし、この世界のことが好きだよ」

きょと、とミトスが目をしばたたかせるのも無理はない。だって、あまりにも突然の話題だ。朝起きて、おはよう、の次に出てくるものじゃない。
まだ、夢うつつなのかもしれない。あの夢の続きのように、ぽつりぽつりとつぶやく言葉が止まらない。

「つらいことも悲しいことも、ままならないこともたくさんあるけど……でも、この世界が好き。シルヴァラントもテセアラも。この世界に来て、みんなと出会えてよかったって思うから」

だから、この世界を守りたい。大切な人がいるこの世界だから。
それは、夢の中でこの世界が好きだと言ったマーテルさんも、……再生の神子として旅立ったコレットも、きっと同じ。ううん、旅の大切な仲間たちも、そう。
つらいことが、たくさんあった。裏切られたことも、傷ついたことも、失ったものも、奪われたものも、抱えた罪も、たくさんある。
それでもみんな、ちゃんと自分の足で立っている。この世界にしかない、自分の大切なものを見つけて、大事に抱きしめて。それを守るために生きて、前を向いて、歩いている。……大切なものがある、この世界に、生きている。

だから行くよ、と笑えば。彼はただ、泣きそうな顔でほほ笑んでいた。