以前、世界再生の旅の途中で出会ったことのあるノヴァ博士と再会し、彼らが光る大きな鳥を見たという情報を得た。もうすっかり忘れてしまっていたけれど、そういえば以前会った時に綺麗な音の鳴る木について情報をもらったことがある。
あの時もあの時でいろんなことがあったから、覚えていないことも忘れてしまったことも多いけれど。きっと、こうやって今必要になる知識とか、いっぱいあるんだろうな。そんなことを思いながら話を聞いていると、確かのリンカの木は絶滅してしまったけれど、人の入れないような場所……たとえば、レアバードでしかいけないような場所なら、残っているかもしれない、とアドバイスをもらった。
その推測は正解。周りを山に囲まれた場所に、その木は立っていた。
長い間、そこでこの木は生きていたのだろう。だけれどこの長い衰退世界の影響でずいぶんとやせ細ってしまっていて、実は生りそうにない。もちろん、ノヴァ博士からその場合の手入れの仕方とかも教わってはいたけれど……昔、名産品だと言って子供に手渡されるほどに当たり前に存在していたものが、今はこんな瘦せ衰えた木一本しか残っていない、というのは、ちょっとショックだった。
あの場所は、この近くだったのかな。どうなんだろう。地理関係はわかんないから、さっぱりだ。
そんな複雑なわたしの気持ちは関係なく、ノームによって元気になった土と、リフィルさんによる強力な治癒術とエクスフィアのかけらによって生まれ変わったリンカの木は、再び美しい葉を広げ、優しい花を咲かせ、実を作る。
それをロイドとプレセアちゃんが笛に加工して、ジーニアスが息を吹き込んで。風の精霊シルフが遠くへ飛ばした音色は、確かに光る鳥を……アスカを呼び寄せた。
光の精霊と契約する時には必ず来てくれ、と約束して、再び空へ消えていくその鳥を見て……わたしたちは、ほうっと息を吐いた。
「無事に約束を取り付けられてよかったよ」
「うん。……しいな、もう立派に召喚士だね。前は無事に喚び出せるかなってあんなに心配ばっかりしてたのに」
「し、仕方ないじゃないか。あの時は本当に初めてだったんだし」
少し意地悪してそう腕で突いてみれば、頬を染めてうろたえるしいなにくすくすと笑う。からかってごめん、と背中を軽く叩けば、まったく、と頬を突き返された。
ウンディーネとちゃんと契約できるかなとか、召喚できるかなとか。不安そうにしていた彼女はもういない。ほとんどの精霊と契約を成功させたからというのもあるだろうけれど、きっとコリンちゃんのことも、彼女の原動力になっているのだろう。
いいな。本当に約束通り、ずっと一緒にいるって感じで。わたしも、あの二人の中にずっと残るくらい、何かを渡すことができたかな。
わたしたちのかけがえのない仲間だったコリンちゃんに憧れのような気持ちを抱いていれば、不意にくい、と袖を引かれた。
誰だろうと視線を向ければ、控えめに袖をつかむジーニアスと目が合う。彼はもじもじと口をもごつかせると、やがてあのね、と話し出した。
「ねえ、ナギサ。ミトスに渡すお守り袋とは別に、こう、笛を入れるための袋を作ってほしいんだけど……」
「え? 特に刺繍とかいれるわけじゃないなら、難しくないけど……どうして?」
「このリンカの笛、ミトスにあげようと思うんだ。ちゃんとロイドやリーガルに話はしたよ。このまま世界が切り離されちゃったら、叶わないことだけどさ。もし、まだ世界がつながっていられて、また会えるなら。その時に、今度はボクもプレゼントを渡したいんだ」
お姉さんの形見の代わりにはならないだろうけど、と肩をすくめる彼に自然と頬が緩む。なんだろう。一応、わたしの弟はロイドだけだけど。ジーニアスのことだって弟のように思っているし、ロイドと同じくらいには可愛く思っている。そんな弟が友達と仲良くなっている様子を見れて嬉しい気持ちというか。二人が仲良くしているだけで心がふわふわするというか。うん、嬉しい。
最後に会う時間をわたしに譲ってはくれたけれど、世界が繋がっている限りは絶対に会いに来るよって言った言葉に嘘はないもんね。その時に、何かをプレゼントするのは絶対に素敵だ。そうやって彼がミトスのことを思ってくれることが、すごく、嬉しい。
きっと、すごく嬉しそうに笑ってくれるんだろうな。
……ジーニアスの方はわかるけど、ミトスくんに引っ張られているのか、それとも単純にミトスのことを可愛いと思っているからなのか、どっちだろう。
自分でもわからないけど、彼に笑ってほしいのはいつだって本当だ。わたしはまかせて、とこぶしを強く握った。
「そっか……そうだね。わかった。いいよ。用意しておく」
「ありがとう!」