アスカとの約束も取り付けたのだから、あとは光の精霊がいるマナの守護塔を上るだけだ。
それだけ、なんだけど。久しぶりに上る守護塔は階段が長くて、戦闘前にすでに疲れてくる。前回と違って仕掛けはもうすべて解除してあるせいで、魔物と戦いながら階段を上るだけ、というのが疲労の原因かもしれない。
いくら体力つくりに励んで筋トレも欠かさずしていても、疲れるものは疲れるのだ。パッと上に行く方法とか、ワープとか、ゲームにあるようなご都合な移動手段があればいいのに……なんて。レアバードを屋上に着けられない時点でわかっていたことでもあるので、今さら泣き言なんて言えないけど。
「階段が長いばかりでつまんねえな〜」
「……シルヴァラントの他の神殿と同じで、仕掛けも解除されていますから。単調に感じるのだと思います」
「以前のわたしたちが頑張ったからね……!」
「……元気な若者もいるようだがな」
わたしの他にも疲れていると言うか、単調な階段に辟易している人がいてよかった、と思うけど。
リーガルさんの言葉に前を向いて、苦笑する。ああ、確かに。元気に魔物を倒す疲れ知らずな若者もいるようだ。
「やったねロイド! ボクたちのコンビは最強だよ!」
「あったりまえよ! これからもよろしく頼むぜジーニアス!」
そういえばあの二人は以前守護塔を上った時もずっと元気だったなあ、なんて思う。
ううん。あの時はコレットの天使疾患のことをみんなが知ったばかりで、世界再生に迷いだして、それでも世界を救いたいと言った彼女のためにがむしゃらに前を向いていたから、元気だったと言うより、空元気だったのかもしれない。
ああ、そうだ。以前にここに来た時にリフィルさんが治癒術を強化したのは、彼女の他にも助けたい人がいたからなんだよね。あの後ハイマに言った時にピエトロさんは治療したけど元気にしてるかな。クララさんは、今どこにいるんだろう。ショコラさんは、まだ牧場にいるのかな。
二つの世界の楔を抜いて、大樹が発芽しても、きっとやらなくちゃいけないことはたくさんある。
こんなにたくさん、助けたいって思うのは欲張りかなと思いつつ……それでも、今足を止めないように。わたしたち、きっとまだまだ、頑張れるよね。
「待て!」
階段を上り切って、次の移動装置で祭壇に着くぞ、というところだった。
前方に人影が見えて、わたしたちは思わず身構える。知らない人ではない。知っている人だから。
わたしたちの道を遮るようにそこに立っているのは、クラトスさん、だ。
「クラトス! 邪魔をするな!」
「そうはいかん! 今、デリス・カーラーンのコアシステムが答えをはじき出した。精霊と契約をすれば、大いなる実りの守護は完全に失われてしまう!」
「それこそ我らの願うところだ」
クラトスさんめがけて、今度はわたしたちの後方から光弾が飛んでくる。見覚えのあるそれは、ユアンのものだ。
当然、それくらいクラトスさんはかわしてしまうけれど、おかげで彼が遮っていた移動装置への道は開けた。再び彼が立ちふさがらないようにと、ユアンがわたしたちの前へと躍り出る。
クラトスさんはユアンを強く見据えると、どこか焦ったように声を張り上げた。
「わからないのか! お前の望む結果は得られん!」
「黙れ! この機会を逃すと思うか! ロイドよ! こいつの相手は私に任せろ! お前たちは一刻も早く、光の精霊との契約を済ませるのだ!」
お互いに武器を構えてにらみ合いを始めた二人を置いて、わたしたちは急いで祭壇へと向かう。
クラトスさんが何故そこまで焦っているのかとか、本当に二つの世界がこのまま切り離されるのかがわかったのかとか、聞きたいことはたくさんあったけれど。
わたしたちは一度に多くのことができるわけではない。とにかく、最優先でしないといけないのはすべての精霊との契約だ。だから、今は足を止めない。
最後の精霊との契約は、もう目の前だった。