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お決まりの管制室での作戦会議も、あらかた牧場を破壊したあとの現在となっては少し懐かしいもののように感じる。ここの牧場も、だいたいの配置は同じようで、一番奥にある魔導炉に行く途中で収容されている人たちの救出も出来そうだった。
でも今回は、さすがに時間がない。
魔導炉のみを破壊か停止させて、その間にショコラさんたちを救出する、という方向で話は決まった。
確かに収容室は魔導炉に行く途中にあるけれど、破壊と同時に助け出すには時間が足りない。クヴァルの牧場の時と同じように、戦闘力を落としてでも戦力を分割するしかないだろう。
途中までは一緒に行動して、ロイドが選んだメンバーはそのまま魔導炉を目指す。メンバーはコレット、ジーニアス……それから、クラトスさんだ。
マーテル教会聖堂の……神子の神託があった日のメンバーである。意識して選んだのかどうかは、わからないけれど。

侵入者を排除しようとするディザイアンや仕掛けを退けながら、わたしたちは奥へ向かって走る。
そうして地図の通りに収容室へとたどり着けば、そこにはディザイアンと対峙するショコラさんと、思っていたよりも少ない収容者の姿があった。

「神子さま!」
「動くな!」

駆け寄ろうとしたわたしたちに、ディザイアンは武器を構える。
まだ、距離はわたしたちよりショコラさんたちに近い。下手に動くわけにはいかないと睨み合えば、彼らは苛立たしそうに鞭を床に打ち付けた。

「お前たちか! 侵入者というのは!」
「お前たちの侵入を聞いて培養体が脱走した! 責任をとってもらうぞ!」

なるほど。数が少なく見えたのは、もうみんな自力で脱走したからか。マーブルさんといい、結構肝が据わっている人がここには多かったのかもしれない。
その推測を裏付けるように、突然、収容されていた人が大声をあげたかと思うと、思い切りディザイアンを突き飛ばした。
不意打ちであることと、彼の渾身の体当たりであったことで、ディザイアンは大きく体をぐらつかせる。さすがに倒すまではいかないけれど、彼の気をそらすのには十分すぎる出来事だった。

「く、きさま!」

収容者に気を取られたからといって、侵入者に背後を見せるなんて実に間抜けだ。
わたしたちはあっさりとディザイアンをのすと、そのまますぐにショコラさんたちへと駆け寄った。

「ありがとうございます!」
「……ありがとう」
「ほかに収容されていた人はいないのか?」
「他の部屋の者はうまく逃げおおせたようです」
「よし。それじゃあ、みんなのことは、わたしたちが責任をもって保護するよ」
「ああ。頼んだぜ、姉貴。俺も魔導炉を急いで止める」
「うん。……気を付けて」

うなずきあってから、ロイドを見送るために一歩下がる。
助かった、と涙ぐむ人たちの背中を押しながらその場を後にしようとして、ぽつんと所在なさげに佇むショコラさんに気付いた。
彼女が気まずそうに自分を見ていることに気付いたロイドが、何をしているんだと足を止める。

「私は……」
「俺に助けられるのが嫌なら、神子に助けられたと思えばいいだろ。早くいけ!」

まだ戸惑う彼女の手を、わたしも掴む。
振り払われることはなさそうだ。そのことに安心して、わたしは懇願するように彼女と目をあわせた。

「ショコラさん。……お願いします」
「……はい」