「すげー! でっかい橋だなー!」
ロイドが歓声を上げたのは、グランテセアラブリッジと呼ばれる大きな橋だ。
シルヴァラントでよく見た木造のそれとは違い、おそらく鉄製のそれはどことなく地球のそれに似ていて、新鮮さというより懐かしさを感じる。
「聞いて驚け田舎者。こいつはフウジ大陸とアルタミラ大陸を繋ぐ世界一の跳ね橋だ。制御に三千個のエクスフィアが使われてるんだぜぇ」
自信満々に説明してくれるゼロスさんには申し訳ないけど、わたしたちの表情はどうしても曇ってしまう。
制御に使われる三千個のエクスフィア。つまり、三千人分の人間の命がそこに在るのかと思うと……正直、君が悪いな、と思ってしまった。
「三千個……」
「三千人分の……命か……」
「ん? なによなによ? 暗い顔しちまって……」
「そうね、話しておきましょうか」
わたしたちの反応に首を傾げたゼロスさんに、リフィルさんがエクスフィアの成り立ちを説明する。
話を聞くごとに彼は表情を険しくし、話が終わる頃には真剣な様子で目を細めた。
「……ハードな話だな。それ、マジもんなのか?」
「こんな嘘、つくかよ」
「まあそうは言っても、今更死んだ人が生き返るでもなし。人間ポジティブに生きようや」
へらっと笑ってゼロスさんは明るく言う。
その様子に思わず面食らってしまうが、確かに彼の言う通りだ。今さら、死んだ人が生き返るわけでもない。それなら、せめて感謝しながらその恩恵を受けるべきだ。
わかっているけれど……簡単に割り切れなずにズルズル引きずってしまうのもやめられないので。ちょっとだけ憧れた。
「前向きなのか軽薄なのか……」
「まあ、その通りなんだけどね」
「そういやお前もプレセアもエクスフィアをつけてるよな」
「これはレネゲードって奴らから貰ったんだ。しいなとか教皇騎士団とか、結構な人数分わけてもらったはずだぜ」
「プレセアも?」
「さ〜どうだろうな。どうよ、おチビちゃん」
少し離れた場所に立つプレセアちゃんに声をかける。
彼女はもうわたしたちについて来る必要はないのだが、彼女の故郷であるオゼットもグランテセアラブリッジを渡った先にあるらしい。だから協力してもらったお礼に彼女を家まで送って行こう……ということで今も行動しているのだが、彼女の態度が軟化することは一切なく。今もまったく返事はない。
「だ〜めだこりゃ」
さすがの彼も苦笑して、それじゃあと橋を歩き出す。
しっかりとした造りのそれは予想よりも長く、またこの7人が横に広がってもまだ余裕があるくらいには広い。途中でだるまさんが転んだをして遊ぶ子供とねこにんの姿もあるし、テセアラの一般風景が見えた気もした。
……したけど、その、本当に長い。
長いけど風景は何も変わらなくて、ロイドじゃないけどだんだん飽きてくる。実際、ロイドも飽きたらしく先生たちと会話する方を楽しみだしたようだ。
「うん、本当に長いね。ちょっとつまんないや」
「おや、ナギサちゃんには不評かい?」
「だって同じような景色ばっかりだし。ゼロスさんとか、慣れてる人にはあまり感じないかもだけど……観光的にもやっぱりつまんないなあ」
「ふーむ……じゃあそんなわけで、みんなのあだ名を決めたいと思う」
「いや、どういうわけですか」
前後の繋がりが凄くわからない。
何がどうしてあだ名を決めよう、なんてなるんだ。これがテセアラでは普通の若者のノリなのかな。
う、そういえばクラトスさんがいなくなった今、このメンバーの最年長ってわたしだ。この美男美女の中で、一番の、年上。いろいろな意味でおなかが痛くなってきた。
「なんだよいきなり」
「俺さまは、ゼロスくん」
「あだ名じゃないし」
「ゼロスくん」
強調するように言われて、ああ、これはゼロスさん呼びが気に食わなかったようだと思いいたる。
一応ここでは偉い人みたいだったからそうしてたんだけど、そういうの嫌いな人なのかな。
なんであだ名という発想になったのかはわからないけど、コレットもロイドのお姉ちゃんならっていうよくわからない発想で呼び捨てを求めてきたから、神子ってのはそういうものなのかもしれない。
神子っていうか、マナの血筋?
「……はいはい、わかったよ。えっと、ゼロスくん」
「よーしよし。んでもって、プレセアちゃんはおチビちゃん。コレットちゃんが天使ちゃん。ナギサちゃんはおねいちゃん」
「なにそれ……」
「ロイドがお前。ジーニアスがガキ」
「ボクとロイドだけ適当だね」
ここにひどい女尊男卑を見た。
「まあまあ、んで、リフィルさまがゴージャスウルトラクールビューティー」
「嫌よそんなの」
「えーじゃあ女王さま?」
「あのね……もう少し、まともなものはないの?」
「銀髪の悪魔」
「遺跡マニア」
ジーニアスと一緒に思い付いたあだ名をそのまま言えば、容赦なく叩かれた。
結構似合うっていうかそのままだと思うんだけど、お気に召さなかったらしい。
「先生は先生だろ」
「ん? そうか……先生ってのもいい響きだよなぁ。魅惑の女教師か……うひゃひゃ」
「もう勝手にしてちょうだい」
「んじゃあ、リフィルせんせ〜で、ね?」
「好きになさい」