「クソ! 先生たち無事だといいけど!」
「グランテセアラブリッジは一部が跳ね橋になってるんだ。橋を上げられちまったらお手上げだよ」
「……移動中の会話による移動速度の低下……」
「おっとその通りだ、急ごう!」
サイバックを出て、グランテセアラブリッジを走り出してからはみんな無言でただひたすらに走った。
長い長い橋を、ただひたすらに。焦っていて、不安だった。ハーフエルフだからってだけで仲間を失いたくなかった。その一心でコレットを引きずるように走っていれば、隣を走るゼロスくんがふと小さく呟いた。
「しかし、あっついねぇ〜……」
「ロイドのこと?」
「ん? ああ、そう。俺たちからしたら不思議だよ。ハーフエルフのためにあんなに必死になるなんてさ」
そう返したゼロスくんは、たぶん本心だ。
さっきから聞いてると、テセアラではハーフエルフを差別視することが当然だという認識があるらしい。教育として広まっているのかもしれない。だからきっと、気にしたくないと思ってもしてしまうのだろう。
「……ゼロスくんも、ハーフエルフが嫌い……なのは、仕方ないか。そういう教育されてるみたいだし」
「悪いな。でも、あの二人が悪い奴じゃねえってのはわかってんだ。ちょっとしか一緒じゃないけどな」
「いいよ、それで。簡単に割り切れないのもわかってるから」
教育ってそういうものだし。簡単に割り切れるなら、世界はもっとすぐに平和になった。何年もかけて認識を変えようと運動する人なんて必要ない。
それでも今、仲間だって思ってくれるならいい。仲間だと思って一緒に走ってくれているならそれでいいと笑えば、ゼロスくんはことさら明るく笑い返してくれた。
「ナギサちゃんは大人だな〜」
「何も考えてないだけだよ。ただわたしはハーフエルフだとかなんとかよりも、二人のことが好きだって思っただけだから。ロイドだってそう。大好きな人を全力で信じて、全力で頑張ることしかできないんだよ」
「……まったく、俺さまとは正反対だぜ……」
複数の機械音がして、目の前の橋がだんだんと上げられるのが見えた。
おそらくわたしたちが万が一逃げ出すようなことになっても、橋を上げてここで足止めしてしまえばいい、と思っているらしい。
ロイドが苛立たしげに声をあげた。
「くそ! 足止めするつもりか! 飛び越えるぞ!」
「おいおいおい無茶言うなよ! 橋から落ちたら死んじまうぞ!」
「ほっといたら先生たちも死ぬ!」
「……追跡します」
一人飛び出したロイドの後をプレセアちゃんに続いて、わたしたちも走り出した。
坂道みたいになった橋を走るのは辛いが、それでも急がなければ落ちてしまう。向こう橋へ飛び移ろうと飛び出せば、手を引っ張っていたコレットが羽を生やして宙に浮かんだ。
そうだ、コレットは飛べるんだと彼女の手に宙ぶらりんになりながら考えて、後ろでロイドたちが落ちる声に声を張り上げる。
「みんな!」
どうしよう。みんなの救助が先か先生たちが先か。
とりあえず兵士たちに突っ込んで行って、彼らが浮かんでくるまでの時間稼ぎをする方がいいか、と焦りながら進んでいると、周りに水泡を漂わせてみんながふわりと宙に浮かぶのが見えた。
しいながウンディーネを召喚したらしい。彼らが橋に立つと、水は静かに霧散した。
「……未知の存在による着地。損傷箇所、無し」
「うへぇ……死ぬかと思った」
「しいな、助かったよ!」
「呼び出せて良かった……」
わたしとコレットも地面に降りて、先生たちを囲む兵士たちに向かって走る。
彼らはわたしたちに気付いて、くそ、と吐き捨てた。
「くそ! 脱走してきたか!」
「俺たちの仲間を返せ!」
「うるさい!」
互いに武器を取り出して、相手に向かって振り下ろす。
数はそう多くない。
だから、絶対に助けられる!