無事に兵士たちを倒すと、魔術で手枷を壊して来たらしい先生たちがこちらへと駆け寄ってくるのが見える。
遠目から見る限り、怪我はないみたいだ。よかった。本当によかった。
「ロイド! みんな!」
「助けに……来てくれたのね」
「当たり前だろ」
「そうだよ。仲間なんだから」
にっこりと笑いかければ、ジーニアスは何かをこらえるように数歩離れた所で立ち止まってしまった。
それからぐっと表情を歪めると、そのまま俯いて小さくロイドの名前を呼んだ。
「ごめん……ボク、ずっと……嘘、ついてた。迫害されたくなかったから。でもそれ以上に、ロイドたちに嫌われたくなかったんだ……そんなことないって、信じられなかったんだ!」
だから言えなかった、と吐き出すように呟く。
リフィルさんが止めようとしたけど、ロイドはそれをじっと見つめていた。
「ボクがハーフエルフだってわかったら、きっと軽蔑されると思って……怖くて、無くしたくなかったんだ……」
「……確かにハーフエルフってのは嫌われてる。俺だって、ディザイアンは母さんの仇で絶対に許せない。ディザイアンみたいなハーフエルフは大っ嫌いだ」
びくりとジーニアスが体を震わせた。
俯いているから表情は見えない。幼い親友に、ロイドは優しい声で強く言い切った。
「でも、ジーニアスは俺の親友で、先生は俺の先生だ。あいつらとは違う」
ロイドの言葉に二人が顔を上げる。
やっぱり泣いていたジーニアスは、ぽろりと涙をこぼしながら、恐る恐るロイドに尋ねた。
「でも、ボクたちハーフエルフなんだよ……」
「それがどうした? 俺たちの関係が変わる理由になんかならねえよ」
「ロイド!」
強く笑いかけるロイドに、二人は今度は思わずといったふうに笑みを零した。
本当に安心して泣いてしまいそうな顔。そのままの表情でロイドに飛びついたジーニアスを、彼はしっかりと受け止める。
……マーテルさんたちと暮らすことを決めた時、二人もこんな顔をしていたなあ。嬉しくて信じられなくて、初めて触れた暖かさに泣いてしまった、そんな顔。
ほら、そうやって一緒に生きてくれる人、他にもいっぱいいるよ。ちゃんとみんな、一緒に生きて行けるんだ。
リフィルさんは自分を落ち着かせるようにすっと深呼吸して、改めて自分を追い掛けてきた仲間たちを見る。
「……テセアラ組は? 私たちが合流していいの?」
「あたしもミズホの民っていうちょっと毛色の変わった一族さ。あんたたちと変わらないよ」
「……正直、まったく平気ってわけでもないが、俺さまも天使の血を引くとか言われてるしな。ま、お互い様さ」
「私は……帰りたいだけ……」
「そう……わかったわ」
それぞれの事情で、それぞれの言葉だったけれど。
そのどれもに拒絶はないことに、彼女はそっと微笑んだ。
「そういえば、どうしてしいながここにいるの?」
「……頭領の命令だよ。あんたたちの監視を命じられたのさ」
「ミズホの連中らしいな。王家につくかロイドたちにつくか考えようってことか」
「監視役が二人に増えたのか……」
「でもあたしは、あんたたちをどうこうしようなんてこれっぽっちも考えてないよ」
「そんなことわかっていてよ。あなた、正直すぎるもの」
「この際何でもいいさ。しいなにヴォルトと契約してもらって、レアバードの燃料を入れて貰おうぜ!」
「ヴォ、ヴォルト!?」
それまで落ち着いて話していたしいなが、突然声を裏返した。
明らかに動揺した様子に思わず首を傾げてしまう。
「……しいなさん?」
「どうかしたの?」
「……あ……いや……」
「だったらレアバードを先に回収しないか? どのみちヴォルトの神殿はグランテセアラブリッジを渡った先だ。どうせ橋は閉鎖されてんだから、レアバードを回収した方がいい」
ゼロスくんがちらりと背後の橋を見る。
すっかり上がってしまった橋は、わたしたちの足止めのためにも暫くは通れないだろう。それなら確かに、こちら側で出来ることをやるべきだ。
「回収ったってどうやって運ぶんだ?」
「それは、このゼロスさまにお任せあれ〜。そんなこともあろうかと、秘密兵器を用意しといたぜ」
「何? 秘密兵器って」
「そいつは後のお楽しみ〜! さあ、とっとと行こうぜフウジ山岳へ」
上機嫌に歩き出すゼロスくんに続いて歩き出す。
ロイドだけは一つ、ため息をついて。
「またあの山を登るのか……」