53-2

もう久しく聞いてなかった声が聞こえて、わたしたちは一瞬声を失った。
最初に我に返ったのはジーニアスだ。彼は、少し泣きそうな声で呟いた。

「声が……出た!」
「コレット! 元に戻ったのか?」
「あれ? みんな……どうしてそんな所に入ってるの?」

きょとんとした表情でコレットが首を傾げる。
うん、うん! 表情がわかる。声が聞こえる! コレットだ!

「バカな! あんな子供だましの要の紋で、クルシスの輝石が抑えられるわけがない!」
「……へぇ〜、やるじゃないのロイドくん」

ユアンさんの言葉にゼロスくんがロイドの肩を叩く。
プロネーマも呆然としていたが、我に帰るとコレットの手首を強く掴んだ。

「なんということ……しかし所詮は粗悪品。長くは保つまい! さあ、とにかく来やれ!」
「離して!」

コレットがプロネーマを突き飛ばして、その勢いで尻餅をつく。
その下から黒い煙が上がったかと思うと、わたしたちを捕らえていた檻が消えた。どうやら檻を作っていた装置を彼女が壊してしまったらしい。
いい方向に物事を転がしつつ、本人は装置を壊したことに戸惑っている、なんて、まさしくコレットだ。

「……あ。ど、どうしよう〜! 壊しちゃった……」
「おお〜! やるなあコレットちゃん。俺さま惚れちゃいそ〜!」
「あはははは! それでこそコレットだよね!」
「相変わらずねぇ……」
「悪夢が蘇るよ……」

オサ山道でのことを思い出したのだろう。一人遠くを見るしいなに笑ってしまうと、コレットは駆け寄ってきたロイドに一生懸命に話しかけた。

「ロイド! あのね、プレゼントありがとう! 嬉しかったんだけど、ホントに嬉しかったんだけど、あの時はどうにもならなくて……」
「いいよ、そんなの」
「二人とも! 後ろ!」

リフィルさんの声にハッとそちらを見る。
突き飛ばされたプロネーマが、杖をコレットたちに向けていた。

「小癪な……妾を愚弄せし罪、償ってもらおうぞ!」
「危ないコレット! ええい、旋幻舞、月閃光!」

庇うついでに帯を叩きつける。その力は、今までと明らかに違う。ユアンから借りたままのエクスフィアの力で、確かに自分の体が強化されているのがわかった。
誰かが優しく、だが強く後押ししてくれるような感覚。それに、一人ではないと強く感じる。見知らぬ誰か。ありがとう。あなたの力を貸してもらいます。

「ありがとうナギサ! ……パラライボール!」

コレットが雷を帯びたボールを投げつける。それに怯んだ隙にゼロスくんが切りかかるが、プロネーマは杖を翳すとゼロスくんの真下に魔法陣を浮かべた。

「この……飛翔陣!」
「うわっととぉ!?」
「ダークスフィア!」

浮き上がった彼に、闇魔術を叩き込む。
逃げることも守ることも出来なかった彼は悲鳴をこぼすが、すぐに体勢を立て直すと勢いよく切り上げた。

「いってぇ! やるじゃねえのったく。旋空裂破!」
「散沙雨! 虎牙連斬!」
「獅現陣!」
「真似っこ第二弾! 獅現陣!」
「ぐうっ!」

今までは闘気とかよくわからなくて、帯にもともと備わっているらしい不思議な力でなんとかしてきたけれど。エクスフィアがある今は、どうしたらいいのかなんとなくわかる。
今まで見えなかった何かが見えるような、感じるような。気分の問題かもしれないけれど、今までよりもっといろんなことができそうだ。まねっこだって、苦手じゃない。獅子をイメージしながら、プロネーマに同じ技を返して吹き飛ばした。

「その御名のもと。この穢れた魂の裁きの光を降らせたまえ。裁きの光を! ジャッジメント!」

コレットの声と共に、幾重もの光が地に降り注ぐ。前にクラトスさんが使ったのと同じ技だ。
吹き飛ばされていた彼女は避けることが出来ず、その場に強く体を打ち付ける。

「今だ、行くぜコレットちゃん!」
「うん、わかったよ!」
「ピコ空裂破!」

コレットとゼロスくんの複合特技が彼女に最後の一撃を与えた。