55-3

翌朝。精霊研究所の一太刀から、グランテセアラブリッジの横の船着き場でくちなわさんという、しいなの仲間がエレメンタルカーゴ……エレカーを持って待っていると言われて、再びグランテセアラブリッジにやってきた。
跳ね上げられた橋は、やはりまだ通れそうにない。見回りをしているだろう兵士に見つからないよう、わたしたちはこっそりと船着き場に続く通路に向かって歩いた。

「鍵がかかってます」
「ん、ホントだ。こんなもの適当に……ほら開いた」

船着き場の扉は朝が早かったせいか閉まっていたけれど、その鍵をガチャガチャと弄って、ロイドはあっさりと鍵を開けた。
うーん、さすが、器用。でも手癖悪い。

「すごーい! さすがロイド!」
「手癖わるーい」
「手先だけは器用だよね」
「顔は俺さまに負けるけどな」
「顔は関係ないだろ!」

けらけらと笑いなが扉をくぐる。
それからふと目を横に向けると、橋の姿を横から見ることが出来た。
たくさんの機械が……エクスフィアが埋められて、静かに光っている。

「……橋が見えるわね」
「ホントだ。あの飾りみたいなのはエクスフィア?」
「そうだよ、コレットちゃん」
「……ちょっと気持ち悪いね」
「確かにグロテスクだな。エクスフィアの成り立ちを知っちまうと。そんな風に言うのもどうかと思うけどよ」
「……そだね」

少し沈みかけた気分を必死に持ち上げて、船着き場につく。
そこにいたのは赤い忍者服を着た男の、くちなわさんだ。しいなよりも全体的に露出が少なく、目以外は隠れてしまっているから表情はよく見えない。けれど、忍びやすそうなその服は、まさにテレビで見た忍者だ。
やっぱりミズホは日本……忍者の里らしい。いつか行きたいな。

「待ちくたびれたぞ。これがエレカーだ」
「よーし、ロイドくん。さっき渡したウィングパックを使ってみて」
「えっと……こうか?」

研究所で渡された手のひらサイズのパックを、エレカーに向かって翳す。
すると、次の瞬間にはエレカーが消えてなくなった。わたしたち全員が乗れるだろう、大きな機体がウィングパックに吸い込まれたのだ。

「うわっ!?」
「すごーい! 不思議だね〜!」
「うわー! どうなってるんだろう!」
「ほいぽいカプセルみたい」

本当に存在したんだ!
なんだか感動する!

「な? エレカーしまえたろ?」
「消えた! すげー! すげー! もう一回やってみよう」

ロイドが再びウィングパックを翳す。すると、今度は中からエレカーが飛び出してきた。
ゆっくりと水上に着水して、何事もなかったようにそこに鎮座する。

「すげー! 出て来た!」
「すっごーい!」
「……はしゃぐのはその辺にして、出発したらどうだ」

くちなわさんがそっとため息をつく。
あ、そっか。テセアラじゃこれが当然なんだよね。なんだろ、田舎者丸出ししてしまって恥ずかしい。

「そうだな。よーし、エレカーか! 盛り上がってきたぜ!」
「どうせすぐ飽きるくせに……」
「わー! 海だ!」
「……海ね」
「……海です」
「海だよ」

先生は一人浮かない顔だ。
水が苦手みたいだから、どうしても気分が盛り上がらないのだろう。それでもたらいよりはマシだろうし、ウンディーネがいる限りは、沈没することもないだろう。
乗降時だけ気を付けて、と手を差し伸べて一緒に中に入れば、まったく危なげのない中の様子に、彼女も少しだけ安心したようだった。

「さあ行こうか。目指すはサイバックだよ!」
「しいな、これを持っていけ」
「お守りかい?」
「ああ、気を付けてな!」

くちなわさんに見送られて、全員がエレカーの中に入る。
小型輸送車と聞いたけど、この人数で入ってもそんなにぎゅうぎゅうというわけではなかった。あと二人くらい……大きい男の人ならあと一人くらいかな。それくらいなら、一緒に乗ったところで狭くて困るなんてことないだろう。
しいながウンディーネを召喚して、機体にマナが注がれる
そして、エレカーはゆっくりと水上を泳ぎだした。