58-3

ミズホの民にレアバードの発見を依頼して頭領の家を出てから、ロイドはふと思い出したように囚人の男を呼び止めた。

「あんた、名前は?」
「……リーガルだ」
「リーガルか。あんたには悪いけど、もう少しこのまま捕虜でいてもらうぜ」

今向こうに帰られると困るから、と付け足したロイドに、ちょっと待ったとゼロスくんが声を上げた。

「ロイドくんよー、このおっさんにも戦わせたらどうよ」
「裏切るかもしれないのに?」
「プレセアちゃんに用事があるんだろ、おっさんは。だったらチビちゃんから話が聞ける状態になるまで、俺たちに危害は加えないじゃないか?」
「ああ、なるほどね」

確かに。リーガルさんの目的がプレセアちゃんとの会話なら、少なくともプレセアちゃんのエクスフィアをどうにかするまでは、彼は危害を加えることが出来ない。
現在の彼女は、必要最低限のことしか話さないし、彼のことを敵と認識してしまっている場合、絶対に会話に応じないだろう。
彼が一人でアルテスタさんの所まで行って説得するというなら別だが、それだってもう一度ガオラキアの森を抜けるわけだし、それなら一緒に行動した方がいい。

「そうね、悪くないアイデアだわ」
「姉さん!」
「胡散臭い気もするけど、まあいいさ。あたしも最初は敵だったんだし」
「懐かしい。しいなってば落とし穴に落ちて……」
「そ、そういうのは思い出さなくていいんだよ!」

思わず懐かしんでしまうと、しいなが慌てて止めてくる。
でも、本当に懐かしい。あの時はテセアラだとかシルヴァラントだとか、天使だとか世界再生だとか何も知らなかった。……ずいぶんと、遠くに来たものだなあ。

「……ということらしい。どうだ? 一時的にでも俺たちの味方として戦えるか?」
「よかろう。我が名とこの手の戒めにかけて、決して裏切らぬと誓う」

ぐっと両手を持ち上げて、彼はそう宣言する。
嘘をついているようには見えないし、何かを企んでいるようにも見えない。普通に信頼できそうだと思った。
まあ、プレセアちゃんが目的ということでジーニアスからの評価は最低なのだけど。

「少しでもおかしい素振りをしたら、黒こげにするからな」
「じゃあ、よろしくお願いします。リーガルさん」
「ふーん。リーガルね。俺さまとあんた、どっかで出会ったことないか?」
「……神子にお会いする機会など……私はただの罪人だ」
「だから手枷なんかつけてるのか?」
「そうだ。これは我が罪の象徴」
「手枷が罪の象徴? 手枷が象徴する罪って……あ、わかった。手枷泥棒だろ!」

ロイドの言葉に、全員が言葉に詰まる。
ああどうしよう。リーガルさんもすごく困ってる。わたしたちも困ってる。
一人自信満々な様子のロイドに、一番最初にため息を吐いたのはリフィル先生だ。

「ロイド……あなたって子は……」
「こりゃまた、素晴らしい発想力をお持ちで……」
「え? 違うのか?」
「違うよ。きっと、手枷を作るお仕事をしてたんだよ」
「なんで仕事が罪の象徴になるのさ」
「えっと……なんでだろ」

フォローしようとしたらしいコレットも困ったように笑う。うん、フォローになんてならない言葉だったもんね……
先ほどまでの引き締まった空気が緩んで、和やかになっていく空気に追いつけないのだろう。どことなく渋い顔をするリーガルさんに、思わず申し訳なくなる。ちらとしいなと目を合わせてから、わたしたちはそっとため息をついた。

「ごめんなさい。さっきもふわふわしちゃってたのでわかると思うんですけど、みんなちょっと、こんな感じで……」
「いい奴らではあるんだ……ちょっと、変わってるだけで」
「いや……」