抑制鉱石を探せ、とは、言われたけれど。抑制鉱石のある場所なんて見当もつかない、と困っているところに情報をくれたのはリーガルさんだった。
もう閉鎖されてしまったというエクスフィア鉱山。そのうちの一つだというトイズバレー鉱山にならあるかもしれない。その情報をもらい、鉱山を駆け回った結果、わたしたちは無事に抑制鉱石を手に入れることができた。
あとはこれを持ち帰り、プレセアちゃんのエクスフィアに加工して取り付けるだけだ。
嬉しそうなジーニアスを先頭にして歩いて、もうすぐ出口だというところで……わたしたちはその人に会った。
「ダメだ。このあたりにもエクスフィアはない!」
「あれは……エクスフィアブローカーのヴァーリだ」
ゼロスくんが思い出すようにそう呟いた男には見覚えがある。確か、メルトキオでプレセアちゃんに仕事の依頼をしていた男の人だ。
オゼットで見たハーフエルフの男といい、ここに来ていろんな人との再会というか、プレセアちゃんを基点にした
ヴァーリとかいう人はわたしたちに気付いてこちらを見ると、驚いたように目を見開いた。
「リーガル!」
そう呼ばれた方の彼も、驚きと怒気とを孕んだ目でヴァーリを見る。
「きさま……なぜここに? 教皇は何故お前を野放しにしているのだ。約束が違う!」
「ははは! 教皇様が人殺しの罪人と本気で約束をなさるとでも?」
ぎり、とリーガルさんが唇を噛んだ。これまで、戦闘にも参加してくれた彼はもっと、落ち着いて理性的な人だったのに。今にも掴みかかりそうなほどの気迫でヴァーリを睨む彼の手錠が、ぎちりと音を立てたような気がした。
「それに自分はどうだよ。コレットを連れてくるという約束を忘れて、仲間に成り下がったようじゃないか!」
「黙れ!」
びぃん……と、リーガルさんの怒声が坑道内に響く。
思わず、こちらが身をすくんでしまうほどの声だ。いつも、魔物やディザイアンと戦っている時よりも、憎しみを込めた声。本物の、殺意。
わたしが以前に殺された時も、誰と戦っている時でも。ここまでの殺意を向けられたことなんてなくて。彼が、心からこの男を憎んでいるのが、わかる。
「教皇が約束を果たさぬというのなら、私みずから貴様を討ってくれる!」
「……へっ。ず、ズラかるぞ!」
リーガルさんのその迫力にヴァーリは冷や汗をかきながらも、鼻を鳴らして立ち去った。
残されたわたしたちには、どこか気まずい空気が漂う。それを破ったのはコレットだった。彼女はリーガルさんの腕にそっと触れて、気遣わしげに見上げた。
「大丈夫ですか、リーガルさん?」
「……聞いての通り、私は人を殺めた罪で服役中の囚人だ。軽蔑してくれてかまわん」
「そんな……軽蔑だなんて。何があったんですか」
沈黙。
リーガルさんが返したのはそれだけだ。
語るつもりはない、という姿勢に仕方ないさと声をあげたゼロスくんは、彼の肩を少し乱暴に叩いた。
「別に、話したくなきゃそれでいいさ。けど、苦しいときに苦しいって言うくらいはいいんじゃないか?」
「いずれ機会が与えられれば、そのときに話そう……すまない。今はそれよりもオゼットに戻ろう」
他に言うことは何もないと歩き出すリーガルさんに続いて、わたしたちも坑道の外に向かって歩き出す。
人殺し。人殺し、かぁ。
もうだんだんと麻痺してきてしまっていたけど、わたしたち全員人殺しだよね。魔物だけじゃなくて、ディザイアンだって……人だって、たくさん殺した。
本当はどんな理由であれいけないことなのに。慣れてきてしまっていた自分が嫌で、わたしは一人首を振った。
「……あんたは、人を殺したんだ」
そう問いかけたのはジーニアスだ。
リーガルさんの隣に並んで、じっと彼を見ている。
「……殺人者が同じ場所にいるのは辛いだろうが、許してほしい」
「……みんな同じだよ。ボクたちだって、みんな人殺しだ」
ジーニアスの言葉は、もしかしたら彼なりの励ましだったのかもしれない。もしくは、自分も同じ、裁かれる人間なのだと、悔いているのかもしれない。
その真意はわからないけれど……リーガルさんは目を伏せて、それからそっと呟いた。
「……すまない。そのようなことを言わせてしまって」