オゼットに戻ると、村の人から連絡を受けたらしい教皇騎士団が待ち受けていた。
もちろん、捕まるわけにはいかないので抵抗する。幸いにも彼らはあまり強くなく、すぐに昏倒させることができた。
それにしても、こうも追われているとなるとどこに行っても安心できない。
コレットはマーテルの器、ゼロスくんは教皇にとって邪魔で、しいなは裏切り者のミズホの民。ハーフエルフのセイジ姉弟に罪人だというリーガルさん。そんでもって、なんかわかんないけどレネゲードに追われてるロイドと、さらにわけがわからないことに、レネゲードとクルシスに追われているらしいわたし。
よく考えなくても、このパーティ追われすぎである。
「これが指名手配の気持ちかー……ロイドだけ気をつければいい時間は過ぎたんだね……」
「なんだよその時間って!」
最初の旅は、まあコレットもそうだったけど、何かと目立つロイドだけ窘めればすぐに逃げられたし、危険も回避できた。そもそも、追われていると言うより、見つかったら絡まれる、という感覚の方が強かったし。こちらから突っ込んでいくことの方が多かったから、逃げ回る、というのは今回が初めてになる。
あの頃がなんだか懐かしいなぁ、と思わず遠くを見ていると、コレットが申し訳なさそうに眉を下げた。
「みんな……ごめんね」
「また謝る。そんなのいいって」
「うん……ありがとう、ロイド。でも私、心をなくしていた時間のぶんなのかな、今すごく感じるの。私のせいで迷惑かけて、ごめんねって……だから……うっ」
突然、コレットが呻き声をあげて膝から崩れ落ちた。
体を必死に丸めてうずくまる彼女に、わたしたちは慌てて駆け寄る。
「コレット!?」
「い……痛い……ううっ……!」
「すごい熱だわ」
痛い痛いと泣き出した彼女は、わたしたちの声を聞く余裕すらないらしい。リフィルさんがコレットの額に手を当てるとすぐに顔を険しくした。
熱のためか、それとも痛みのためなのか、ガタガタと震えだしたコレットに何もすることができず、おろおろと手をさまよわせるしかできない。
「どいて……」
ふいに聞こえた声に振り返る。立っていたのはプレセアちゃんだ。仕事から帰って来ていたのだろう。
「プレセア! 村に戻ってたんだね」
「どいて……私に……まかせてください……」
「え、ええ。どこかで休ませてもらえて?」
彼女も神木を引きずるほどの怪力であるし、簡単に運べるだろう。彼女の家でも他でもいい、とにかく休ませてもらおうとプレセアちゃんに言われるまま、コレットから離れた時だ。
突然彼女は持っていた斧を振り回して、わたしたちを追い払った。
一体何を、と驚く間もなく、彼女はコレットに斧の柄を打ち下ろす。もともと意識が朦朧としていたコレットはあっさりと気絶して、プレセアちゃんの足元に倒れた。
「よくやった、プレセア!」
続いて聞こえてきた声に、わたしたちはハッと上を見る。
二頭の飛龍を連れているのは、プレセアちゃんに仕事を頼んでいた、あのハーフエルフの男だった。
「あいつだ……!」
「あっコレット!」
飛龍のうちの一頭がコレットの体を鷲掴んで空へと逃げる。
あっという間のそれに、わたしたちは何の反応も出来ないまま、飛龍は上空へと浮上した。
「くそっコレットを返せ! お前はいったい……」
「ふぉっふぉっふぉっ、わしの名はロディル! ディザイアン五聖刃随一の知恵者!」
高らかに名乗り上げた男に息をのむ。
ディザイアン。何故。衰退世界にしか現れないはずなのに。
「ディザイアン!? なんで? ここはテセアラなのに!」
「待て! コレット!」
コレットを太い爪で挟み込んだまま、飛龍は羽ばたいていく。
ロイドが必死に後を追うが、その先に道はない。切り立った崖になっていて、遥かな山並みが広がっているのだ。
空を飛べないわたしたちは立ち止まるしかできない。
それでもロイドは必死に腕を突きだして、力の限り叫んだ。
「コレットーー!!」